[連載]web版 “GT-KZ1000” vol.2「エンジン腰上組み立て」part.1


■web版ストバイ
連載 “GT-KZ1000”
vol.2「エンジン腰上組み立て」part.1

●取材協力:TR Company大原

 


シリンダーの錆による腐食が原因でオイル上がりを起こしていたKZ1000。純正サイズのピストンが使われていたため、0.5mmオーバーサイズ・ピストンを使用しシリンダーもボーリングすることに。なんと、’77年のKZ1000のオーバーサイズ・ピストン、パーツ検索するとカワサキから純正品がまだ購入可能とのこと!! その他、ピストンピンやピストンリングはもちろん、組み立て時に交換する各ガスケットやOリング類にゴムブッシュなど……消耗部品のほとんどがカワサキから出るのには驚きでした。Z系はパーツに困らないと聞いてはいましたが、ホントありがたい。


届いたピストンを見るとKL250の刻印。1000cc=250cc×4。つまり250ccオフローダーと共通ピストン。良いエンジンにするために下準備のバリ取りも丁寧に行います。
紙ヤスリで数ミリほどの細かい角を取るのは大変だなぁ……と思ってましたが、やってみると意外とすんなり角が丸くなってくれました。それにしても地味な作業。「こうした小さな積み重ねがその後のスムーズなエンジンを作るんですよ」とはTRカンパニー後藤さん。怠けずにせっせと進めます。この後も地味で細かく大変な作業の連続!? とは、この時は思いもよりませんでした。


バリ取り後はマニュアルを見ながら、リングの上下を間違えないように、またそれぞれ合口が合わさらないように注意しながら、トップから3rdまでピストンリングを組み付けます。もちろんリングの角もバリ取りしております。

 


シリンダーヘッドは、燃焼室の各バルブの当たり面や状態も良く、バルブガイドにガタもなかったため、擦り合わせ作業をしたらあとは面研とステムシールの交換のみ。“バルブの擦り合わせ”……言葉では聞いたことがありましたが、初めてエンジン内部を自分で作業する僕にとって、わずかな幅の当たり面を擦り合わせる……なんて「キズでもつけたら一大事!?」とまるで精密機器を扱う気分。バルブ・コンパウンドを付け恐る恐るやっていると「1分間に何千回も当たる部分。バルブシートやバルブは耐摩耗性に優れた素材なのでちょっとやそっとじゃ傷つかないモノです。もっと大胆にやって大丈夫ですよ」後藤さん。とはいえ、バルブとガイドの間にバルブ・コンパウンドが残ったまま組んでしまったらそれこそ一大事。整備は各素材はもちろん、どう動いているか? どんな役割を果たしているか? を理解した上で、慎重かつ丁寧で、ときに大胆にが大切……勉強になります。

 

バルブの擦り合わせが終わったら、シリンダーヘッドとシリンダーの面研&ボーリングをお願いしに、TRカンパニーさんもお世話になっている近藤内燃機へ。旧ピストンとシリンダーのクリアランスを測ってもらうと規定値(0.043〜0.070)よりも広く、今回の錆はもちろんですがそろそろ整備時だったのかもしれません。各計測が終わるとプラハンでスリーブをコンコンと!? 「Z1/2のエンジンはこれだけでスリーブが抜けてしまうことが多い。KZシリーズになってからずいぶん減った気はしますが、たまにありますよ」と。なんでも外したシリンダーをストーブで温めるだけでスリーブが抜けるモノもあるんだとか。スリーブが“緩い”(スリーブとシリンダーブロックの密着性が低い)と、その隙間に熱だまりが出来てしまい放熱性が悪くなってしまうとのこと。僕のKZは大丈夫でしたが、抜けてしまった場合はスリーブの打ち替えが必要。


2週間後、作業終了の連絡をもらい引き上げにいくと、見違えるほどキレイな姿に生まれ変わったシリンダー&シリンダーヘッドとご対面!! KZ1000のピストン・クラアランスは0.043〜0.070。もちろん規定値内。

 

こちら洗浄したバルブ周りと新調したステムシール。


ヘッド&シリンダーとともにTRカンパニーに戻り、まずは各部にオイルを注しながら丁寧にシリンダーヘッドを組んでいきます。


「バルブを組み付ける前にシリンダーヘッドのカムホルダー&ヘッドカバーを締めるボルトのネジ山は必ずチェックして下さい」TRカンパニー後藤さん。この部分はナメやすいらしく、ボルトも全て新品に交換して確認。これまた全てモンダイなし!!

 


いよいよピストンとシリンダーを組むぞ! と意気込みながらオイルパンを外し洗浄……と思ったら↑の惨状に。オイルパンを留めているボルトを外し、コンコンとプラハンで叩いてもまるで緩む気配がなかったので、ついエイッと叩いてしまった結果がコレ。「整備は慎重かつ丁寧に」を忘れ、大胆にいき過ぎました。こうした力の入れ具合が昔からホントに鈍感で二ブい……イヤになるなぁ。


床掃除が終わったらガスケットの残りも丁寧に取り除き洗浄。これまた地味だけど大切な作業です。ガスケットとOリングは新品に交換。

 

Z系のウィークポイントとも呼ばれているジェネレーターカバーからのオイル漏れ。以前わずかに漏れていたコトがあったので、液ガスにてしっかりと密閉。

 

 


さぁいよいよピストンを組み付けます。1〜4番、そして進行方向を間違えないよう何度も確認。ピストンピンにオイルを注しクリップを飛ばしてしまわないようこれまた丁寧かつ慎重に!! 途中、慣れない作業でなかなか上手くクリップがハマらず、何度かイラっとしましたが、そんな自分の心を鎮めながら「慎重に丁寧に」とブツブツ言いながら進めます。オートバイの整備を通してあらためて忍耐の大切さを教わる気分。「AUTO-BY MAKES A MAN」です、ホント。


ガスケットを付けたら、2/3番ピストンの下に割り箸をかませ、4つのピストンの高さをだいたい合わせたら、1気筒ずつピストンリングを丁寧に抑えながら各シリンダーにそれぞれのピストンを通していきます。指に感じるリングのわずかな張力が、たった0.05mm程度のクリアランスの間で燃焼室の気密性を保ったり、最小限の油膜を保持している……ピストンリングってスゴいことしてるなぁ。

 


シリンダーとシリンダー・ヘッドの間に付くガスケットやOリング、ゴムブッシュ類は全て純正新品に。カムチェーン・テンショナーとガイドスプロケットを付けヘッドを装着。ヘッドナットはマニュアルにある順番通りにトルクレンチを使いはじめは2.5kgで、その後4kg(3.7〜4.3kg)で締めていく。
だいぶカタチになってきました。ここで日が暮れタイムアップ。あとはカムシャフトを付けエンジンを完成させ、キャブの調整&組み付け、そしてマフラー。う〜ん、まだまだあるなぁ、いやもう少し!?

part.2につづく。

 

 

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[連載]”GT-KZ1000″ vol.1「オイル上がり!?」


■web版ストバイ
連載[GT-KZ1000]〜前回までのおさらい〜
part.1「原因はオイル上がりだった!?」

 


今年2月にアメリカからやってきたカワサキKZ1000。キャブのOHにバルブクリアランス調整 & 同調調整を経て、ようやく本来のスムーズさを取り戻したか!? と思った矢先、またグズつき始め、とうとう都内をノンビリ30分ほど走った程度でカブった症状になりプラグを見ると↑ご覧のとおり。しかもどれだけ燃料を絞っても4番(写真右)だけは真っ黒のまま…。恐る恐るプラグホールを覗くと……黒光りしたピストン!? 「シールがダメになってオイル下がったんじゃない? 残念だけどステムシールは消耗品だからね」とYASさん。お財布事情はキビシいけど直すしかない。というワケで勉強のつもりで自分でバラしてみることに。

 



マニュアルによるとマフラーとプラグを外し、ポイントカバーを開けクランクシャフトを回し、タイミングマークと#1と#4の上死点(Tマーク)を合わせたら準備OK。まず16本も(!?)あるヘッドカバーボルトを外しヘッドカバーをオープン。バルブクリアランス調整のために1ヶ月前に新品に交換したばかりのヘッドカバー・ガスケット(純正で5000円近くもする高級品!?)がまた破れていく…。バルブクリアランス調整のたびに5000円はツラいけど、半月状のカムシャフト・プラグの両サイドには液ガスを塗れってマニュアルにあるし…ウ〜ン。


4つのカムホルダーとカムチェーンガイドを外しカムシャフトを摘出。その後またもや14個もある(4気筒は何かと大変! )シリンダーヘッド・ナットを外し、プラハンで優しく叩くとすんなりとヘッドが浮き上がってくれ、人生初のエンジン分解作業ながらここまではドコも壊すことなく順調でホッとひと息(慎重にやり過ぎすでに半日経過してますが…)

 


なんと4番ピストンこのありさま!! 付着したオイルとカーボンは数ミリの厚さ!! 燃焼室にオイルが入っちゃうとピストンはこんな状態になるのか!? そりゃプラグも湿るワケだ……オイル下がりを疑わないボクは大してシリンダーをチェックしないままマイナスドライバーでひたすらカーボン除去(結果的にはすべて新品になるワケでしたが…)

 


バルブコンプレッサーでバルブコッターを外し、バルブをチェックするとバルブの傘にもオイル&カーボン (インテーク側:左=3番/右=4番)。

 


バルブガイドに付くステムシールの脱着作業は、やみくもにやるとガイドを傷つけてしまいそうだったので、シールのチェックがてら外したヘッドと車体とともに編集部近所に移転した[TRカンパニー]へ。すると8つのステムシールはまだゴムの弾力も十分で各ガイドのガタもない……つまりオイル下がりではない!? との診断。「シリンダーまで外しましょう」とTR後藤さん。旧車に乗るセンパイ方は皆さん通る道なんでしょうか!? ステムシールの交換だけで終わると思っていたらいち大事に…。

 

すると…

 

こちら4番シリンダーの内壁。下死点にあるピストンのちょうど上にグルッと一周キズが…。

1番シリンダーも4番と同様の位置に傷…。

TR後藤さん「コレはおそらく錆が原因ですね」

見ると、#1と#4シリンダーの内壁にグルッと一周囲むように……傷!? 指で触ってみるとはっきりと段差を感じる。一方で#2と#3シリンダーはキレイな状態。「#1と#4ピストンが下死点にある状態(#2と#3ピストンが上死点)で長期間放置していたんですかね? 油膜がなくなって同様に錆びが原因で腐食してしまったシリンダーをたまに見かけるんです」と後藤さん。つまり原因は“オイル上がり”!? 「ピストンは純正サイズだったので、コンマ5のオーバーサイズ・ピストンを用意してシリンダーはボーリングですね」……あらららら。

 

「乗らないオートバイでもたまにエンジンをかけた方がいい」
これまでその理由をちゃんと考えたことがなかったケド、それは各部にオイルを回しておく(油膜を残した状態にしておく)ためだったということか!! なんだか4ヶ月くらい乗らない期間があったSRのシリンダーまで心配になってくるなぁ。

 


そしてシリンダーを外すとビックリするほどの砂利!! TRメカ三井クン指導のもと、ハケや筆で丁寧に除去しました。

 

part.2へ続く。

 

 

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[連載]GT-KZ1000 & Sport Riders by SR500FI まもなくスタート!?

誌面で連載してきたカワサキKZ1000による[GT-KZ1000]と、乗り出して8年になるインジェクションSR 500F.I.(500cc化にしサブコンにて燃調済み)による[Sport Riders]を少しずつですがweb版連載をスタートしますので、たまにのぞいてくださいネ。

狙ったワケじゃないけど、KZ1000もSRもシリンダーが前傾しているスタンダード。対照的な単気筒と4気筒……それぞれ乗るたびにいろいろ考えさせられ勉強になります。それにしてもSR35周年(2013年)モデルのダークグレーイッシュ・グリーンもKZ1000のルミナスネイビーブルー(デザインは1977年KZ1000で色は1979年KZ1000 MkIIの純正色)も良い色だなぁ。

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