[SR500F.I.]初めてのヒューズ切れ。原因究明-3

切れたり切れなかったり……SR500F.I.がレッカーを含め不定期に4回もエンジン不動に陥る原因不明のヒューズ切れに見舞われ早4ヶ月。いよいよ佳境に迫ってまいりました。前回、前々回の模様は⇩で。

 

■「初めてのヒューズ切れ」原因究明-1は→原因究明-1
■「初めてのヒューズ切れ」原因究明-2は→原因究明-2

 

配線図を辿りキルスイッチ、フレームアース、フューエルポンプリレーと、安価で確認しやすい場所から故障やリークの原因を探るも上記3箇所は全て正常。残るは関連する配線を一本一本確認するか、メインキーの交換か、フューエルポンプの交換。そこで僕が睨んだのはメインキーでした。それは以前にキーシリンダー内部で削れた鍵や鍵と接する部品(各ディスク板)の鉄粉が原因で導通不良を起こしたりリークの原因になったり……という話を聞いたことがあったからです。

 

また、ヤマハ車に多い症状ですが、僕のSRも4〜5年目くらいからハンドルロックの解除やキーOFFからONにする時にやや回りづらくなる症状が出始め、その症状は徐々に酷くなり、オーナーだけが分かるコツじゃありませんが、微妙なチカラ加減でカギを前後に押しながら動かさないと“スムーズに回わらない”状態になってもいたからです。前回も書いてますが、パーツクリーナーでの洗浄は何度も行いましたが、鍵を刺す部分から吹く程度……これほど不定期なヒューズ切れからすると、日々、回りづらくなっているキーシリンダーはやはり怪しい……と考えたのです。



ところがメインキーの交換はなんと約10万円!? (高過ぎてツライ)……と悩みながらネットサーフィンしていて見つけたのが、錠前のプロフェッショナル=ツールドコルスさんでした(ブログ「カギの穴からこんにちは」も要チェックです)。ブログをさかのぼって読み進めると、オートバイのキーシリンダーだけじゃなく、自宅の鍵やスーツケースの鍵など……ありとあらゆる鍵の修理、改良、スペアキーの製作を行うスゴ腕の鍵屋さん。そして配線リークのことも忘れ思わず気になったのは、旧車に多いキーON時の“カギ抜け”、そしてヤマハ車に多いカギが“回りづらく”なるトラブルの修理/改善・改良についてでした。



基本的にはキーシリンダーを郵送し(トップブリッジから外せない場合はトップブリッジと一緒でOK)、修理し送り返してくれるシステムですが、一刻も早く!! というわけで、栃木県壬生町にあるツールドコルスさんにキーシリンダーを持ち込みました。

ツールドコルス主宰で技術者の青木さん(正式な肩書きは、日本錠前技師協会認定錠前技師 / 錠前特殊加工技師 / スーツケース修理士)は、度重なる同様の症状の修理をこなす中でその構造的欠陥に気づき、キーシリンダーの内部構造を独自の技術とノウハウで改良することで、単なる修理を超えて“今後、同じようなことが二度と起こらないよう”に改良・改善までしてくれるというのです!! この改良については、あらゆる鍵の構造を知り尽くした熟練の職人であり、探求し続けてきた技術者だからこそ辿り着いたノウハウで、青木さんも「おそらく現在、全国で同じ改良・修繕を行う鍵屋さんはないと思います」と仰っていました。

 

というわけで、“何をどう施すか!?”は当然企業秘密で、僕自身も具体的な内容を聞くことも作業を拝見することもできなかったのですが、その仕上がりはお世辞抜きに素晴らしく、今後“回りづらくなる”ことがないことを考えると、その仕上がりはもはや新品以上といえるクオリティと言えるのです。つまり、値段の問題以上に新品を購入するよりツールドコルスさんにて修理した方が、断然お得というワケです(価格も想像をはるかに超える安価!! 詳細は後ほど)。




こちらトップの写真と同じモノですが、キーシリンダーを分解し取り出した“内筒”と呼ばれる部分にSRの鍵を刺した状態(キーOFF)。SRの場合、カギの山と溝が計8枚のディスク板と組み合わさる作りで、正常であればカギを刺すと各ディスク板は“内筒”から飛び出さず“面一”になることで鍵が“回る”仕組み。つまり、違う鍵でキーシリンダーが“回らない”のは、鍵とディスク板がピッタリ合わないため、ディスク板が内筒から飛び出した状態(面一にならない)になりディスク板が外筒に引っかかることによって回らないのだそう。

そこで、上記の写真をもう一度よく見てください。内筒に対して鍵が若干“左上がり”に刺さっているのが分かるでしょうか? そして、それに伴うように、内筒の先端にいけばいくほど、ディスク板の飛び出す幅が増えています。僕のSRの鍵が回りづらくなっていた原因はコレ!!

[×]手で持っていますが、最初の写真と同様に普通に刺した状態。“左上がり”でディスク板も比例して飛び出しています。

[◯]鍵が内筒に対して垂直に刺さるように手で調整すると(この場合、やや鍵の持ち手側をやや上に持ち上げる)、ご覧のとおりディスク板は内筒に対して面一になり飛び出ません。いわゆる正常なキーシリンダーは鍵が刺さっている時はこの状態。

構造を知ると、回りづらくなってから鍵を微妙なチカラ加減で前後に押すとスムーズに回っていた……というのも納得なのです。


こちらはツールドコルスさんからお借りした、他のSRのお客さんの修理写真。

では、どうして使用している内にこうなってしまうのか!? というと、これはもう構造上の欠陥でしかないらしいのです。もちろん、何百何千回と抜き差しする鍵を毎回キーシリンダーに対して垂直に刺し、かつ回す際もその垂直を狂いなく保ったままであれば、早々こうした状態にならないのかもしれませんが、そんなの不可能なのは誰でも分かること。

また、“ディスク板の飛び出した部分”を削ることで修理する鍵屋さんもあるらしいのですが、もうお分かりの通り、その修理は間違えた応急処置でしかなく、一時的に回りやすくなるかもしれませんが、いずれまた同じ症状が起きたり、本来必要なディスク板を削ってしまうため、今度は鍵抜け等を誘発する恐れもあるのです。



ツールドコルスさんはディスク板を削ることなく内筒内部に独自の技術で加工を施すことで、一般ユーザーが普段通り気軽に使用しても鍵が“斜め”にならないように改良してくれるのです。

分解したばかりのコンビネーションスイッチ。溶け流れたグリスの汚れは割と酷い方だそうで、導通に悪さをする場合もなきにしもあらず……とのこと。

驚くほどキレイにしていただいたコンビネーションスイッチ。

またツールドコルスの青木さんは、趣味で過去に4輪ラリーを楽しんできた経緯を持ち、現在も二輪も四輪も整備からレストアまで自身で行うほどの知識と経験があるため、偶然でしたが当然配線関係にも詳しく、今回のフューズ飛びの件を相談すると「キーシリンダーの修理とともに、コンビネーションスイッチの確認・清掃、そして配線の導通も確認しますよ」と。

 


そしたらなんと!! メインキーの配線で一部導通が怪しい箇所があったのでした。「繋がったり繋がらなかったり……でもコレでヒューズが飛ぶとは考えにくいですね」と青木さん。整備関係だけじゃなく電気関係にも詳しいツールドコルスさんには各配線等の部材も揃うため、念のため配線も新しくしてもらったのでした。


またスプリングの変形により半開きになってしまっていたシャッター部分もスプリングを交換し修理してもらいました。(写真は変形してしまっていたシャッターの開閉を担うスプリング部分)

こちらは仕上がったキーシリンダーを無事車体に組み終えた状態。ほんとに素晴らしい仕上がりで、鍵を回す際の「手応えのあるしなやかさ」はまさに新品同様!! ※内部構造は新品以上!!

 

そして気になる修理代は、
■キー抜け/キーの回りづらさ=¥8,000(税別) ※今回は配線製作代が別途かかりましたが、正直、仕上がりそして技術代から考えても安過ぎる価格です。
■黒色のサブキーからの追加合鍵製作=¥10,000(税別/一本)

 

いずれにせよ、SRをはじめ僕と同様の症状で困っている方、旧車での鍵抜けで困っている方(こちらも独自のノウハウで修理・改良してくれます)、その他、スーツケース等での困り事も含め、ツールドコルスさん、本当におすすめです。青木さん、ありがとうございました。

 

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最後に、オートバイの鍵の修理も多数こなしてきた青木さんから
「鍵が抜けはしないけど回りづらい時によくしてしまうのが、キーを捻って曲げてしまうことです。キーが引っかかるけどついつい力を入れて回してしまうのは分かりますが、これは絶対にダメです。また、合鍵などもしっかり技術を持ったところで作らないとシリンダーを痛める結果となります。今回のようなシリンダーが要因で回りづらい時に、質の悪い合鍵で回すとキーもシリンダーも痛め取り返しがつかなくなります。また、回らないからと潤滑剤で“556”を多用するのもダメです。556等には金属を溶かす溶剤も含まれているため、必ずトラブルの原因となりますし、サビを誘発したりグリスを洗い落としてしまい潤滑不良も起きるためデメリットでしかありません。少量のグリス・スプレーか、少量の鍵用の潤滑スプレーもしくは少量のフッ素系潤滑剤を塗布するのがオススメです。なおネットでは鉛筆の芯を削って潤滑代わりに使うネタがありますが、アレは異物混入や詰まり要因となるのでおススメはしません」とのこと。




さて、10万円を覚悟していたメインスイッチは、回りづらさだけじゃなく、想定外の配線トラブルまで発見・修理できて、なおかつキーシリンダー内部の洗浄も完璧に出来て1/10程度の費用で収まりました。懸案のヒューズ飛びは直るのでしょうか!?

続く。