WWW.COM-番外編/もう夏じゃん。タペ調しよう!

なにしろ昔はコレが苦手だったけど、W3でいっぱいするようになったらわりと平気になり、100分の1の違いまで調整できるようになってきました。

前回に引き続き、W3エンジンのタペット調整の話です。タペット調整はまず左右点火プラグを外し、タペットカバーとエンジン左側のシリンダーの付け根にある“タイミングホール”のフタを開けて、タイミングホールにクランクウェブ左面に付けてある“赤線”現れるように、キックアームやギアを入れてリアタイヤを使ってクランクを廻していく。

これは圧縮上死点前5°。この位置はポイント(点火時期)調整に使うポイント。

こちらが正式な圧縮上死点。赤線の左端と孔の左端が合致したところで、タペット調整の基準点。

そのときに、左右どちらかのロッカーアームが吸気側→排気側の順でバルブを押し下げる動きを見せるわけだが、その下がった吸気側ロッカーアームが上がりきった頃に、その赤線がホールに現れてくる。その赤線が真ん中に来た時が圧縮上死点前5°の位置。そして写真のようにその赤線の左端が窓の左端にくっついたところが圧縮上死点を示している。この2つの位置は重要で、圧縮上死点前5°はポイント(点火時期)調整のための基準位置。左端の圧縮上死点はタペット調整のための基準位置……吸排両バルブが閉まり切っていてカムやプッシュロッドの影響を受けてない状態だから、タペットのクリアランスを計測して調整できるというわけだ。

タペット・クリアランスは吸排ともに0.05〜0.07mm(冷寒時)、とサービスマニュアルには記してある。他の機種では、排気側は熱くなるので広めの設定が多いのだが、W1系エンジンではそういうワケでもないようだ。さらに、W1工房・厚木基地のW1レストアの師匠、関根さんは「組み上げ直後は特にそうだが、いつどのようにタペットクリアランスが詰まっていくか予想がつかないから、いつも広めにしておくのが得策。私は吸排ともに0.1(=0.10)mmにする」のだそうで。そこで、僕も組み上げて1000キロくらいは0.1mmでタペ調して、その後ガスケット類のツブれも一段落した頃に0.09mmにしてみたりする。

これでよし!と思ってナットを締めると、シックネスゲージを引き抜く感触が違ってたりすることはアタリマエ。それに懲りずに何度もやり直しをしているうちに、ビミョーな感触が分かってくる。

でも、ここにビミョーなポイントがある……シックネスゲージを引き抜く時の“感触”の違いで、クリアランスにも差がでる!?……しかも、タペット・アジャスターのロックナットの締め具合でその感触もずいぶん変わってくる。ロックナットを締めた後、シックネスゲージがスルンと抜けるような場合は、実際はアジャスターとバルブヘッドの隙間でゲージが斜めに挟まっている場合が多く、計り直してみると0.01〜0.02mm広くなったりする。一方、指に金属のギシギシ感が伝わってきて抜き取りにくい時はわりと狙った数値の場合が多い。この“感触の幅”というヤツを、組み上がり直後⇔1000キロ走行後のタペ調で使い分けたり……さらにシックネスゲージを抜いて、アジャスターのアタマを持って上下に揺すってみて、その時の“カチカチという音”を覚えておいて、左右吸排で均一な音の感触に揃えながら、広め感触/狭め感触を設定することにしている。

で今回タペット調整をする前に計ってみると、前回0.1mm+広め感触にしたにもかかわらず、左右吸排どれもが0.07mm辺りに詰まっていて、それなのにナゼだかカチカチ音は大きくなってきた。普通、クリアランスが開いたからタペット音が大きくなるのかと思いきや、逆に詰まって音が大きくなってたのにはオドロキ!! そこで、今回は0.09mm+狭め感触に調整してエンジンをかけてみるとタペット音もいくぶんか静かになったので何とも不思議なものだ。一体、何だったのだろうか?……まさか、バルブスプリングと狭くなったクリアランス、そしてエンジン回転数など条件がシンクロして何らか共振点が生まれて“バルブサージング(バルブジャンプ)”みたいな状態になりかけたのだろうか?……でもサージングするような高回転でもないし、バルブヘッドの摩耗も大してないし、バルブステムが曲がって圧縮が抜けるような感じもない……よく分からないけど、とりあえず今回の0.09mm+狭め感触は上手くいったようだ。

ネジ孔付近がビミョーに波打ってるのがわかるだろうか?漏れ&滲みが止まらない方は要チェック!!

さてさて今回のタペ調の際に“重大な発見”があった!!!!……ロッカーカバー(タペットカバー)の合わせ部分はナゼかオイルが滲みやすい……その原因が分かったのだ。それはロッカーケースの構造/形状にあったのだ。ロッカーケース側のカバー合わせ面下側は、ロッカーケース自体をシリンダーヘッドに止めるボルトの取り付け孔がすぐそばにあって、形状的にもその部分だけ内側に肉厚になっている。この部分は8mmネジ(アタマ13mm角)を2.5kg-f前後のトルクで、シリンダーヘッドに締め付ける部分(…マニュアルだと4.5〜5kg-fと記してあるけど、そんなバカトルクで締めてはネジ山が抜けてしまうので要注意!!)。

スタッドボルトを外さずとも、オイルストーンで歪んでいるところを均すことはできる。

その部分が長年の変形なのか熱膨張での変化なのか、指で撫でてみると目に見えない程度だが外側(合わせ面側)に盛り上がって、平面のはずがビミョー“曲面”に感じさせ!?……おや?と思って何度も何度も撫でてみるうちに、そのわずかな盛り上がりがやっぱりボルト孔のトコロだけだと分かってきた。冷えていても盛り上がってるわけだから、エンジンが熱くなったら膨張でもっと盛り上がってしまって、カバーを浮かせてしまうのかもしれない……きっとコレが、タペットカバーのオイル滲み/漏れの隠れた原因なのだ!! そこで、オイルストーンを使ってその部分を、指で撫でても曲面に感じない程度に均しておいて、今回も懲りずに厚めのカバーガスケットにシリコン系接着剤を塗ってカバーを取り付けたのだが、その後は何度も暑い日に走ってもオイル滲みや漏れはない。もちろん接着剤のチカラかもしれないけど、タペットカバー側を面研することとともに、ロッカーケース側の合わせ面をオイルストーンで均しておくことも大きく効果を発揮しているとも思えるので、一度W乗りのみなさんもチェック&対策してみてください。

ガスケットは厚木基地・関根師匠お手製の厚めのガスケット紙。現在も入手可能な純正でも大丈夫だろうが、リプロ品の薄いタイプはやっぱり漏れやすいだろう。

前回使ったスリーボンド1184液体ガスケット灰色は、ガスケット紙には向かないようだ。多くの旧車ショップで重宝されているのは1215シリコン系液ガス。密着性も良好な上に、剥がす時には剥がしやすいそうだ。2300円前後。

その1215液ガスが注文してもなかなか届かなかったので、ガマンしきれずに、信越シリコンKE45よりは柔らかく弱いバスコークを塗って着けてしまった。とりあえずオイル滲みは発生してません。

それにしても、旧車は、たしかに故障も嫌だし修理・メンテ・レストアに手間もかかるけど、現行車とは違う表情をいっぱい見せてくれるし発見もあるので、それなりに楽しく思ってしまうこともあるから、病み付きになってくるトコロもあって、これが“ハマる”ということなんだろうと思う。けど、やっぱり調子良く走らせていることが何より楽しい、その魅力があってのことだからね。

夏休み直前、ここへきてLONG TOUR TankBag-ver.2のご注文が増えてきました。長旅には、こんなタンクバッグがお似合いですね。

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