[KZ1000]ガバナー交換。「わずかな不調の原因はガバナー・スプリングの“ヘタり”!?」

帆布ダークブラウンのタンクバッグはようやく認知度が広がり動き出してきた感じでしょうか。早く使い込んでオイルを入れた状態も見せたいですね。

先週の帰り道、突然アイドリングが不安定になり、スロットルの開け始めでグツつき始めたKZ。当然、回転の上昇も鈍く不安定になり明らかにどこかで何かが起きた感じでした。アメリカからやってきた当初、それまでの長期保管の影響でキャブ2番のスロージェットが詰まっていた時と似たような症状にも感じたため、「またキャブ? それとも電気関係?」とアタマを巡らせながら翌日プラグをチェックしてみると、見事に4番が真っ黒(それ以外はキレイな焼け具合)。よ〜く見ると湿り気すらあったため、プラグ自体が完全に死亡していた模様。プラグを交換すると調子は戻ったのでひと安心したのですが、どうして急に4番プラグがダメになったのだろう!?



そもそも2年前にKZ1000を用立ててくれたアメリカ・オハイオのジョニーズ・ビンテージモーターサイクルで働くイトーさんに聞くと「ガバナーのスプリングがヘタってるんじゃない?」と。なんでもガバナー・スプリングがヘタっていると、アイドリングが不安定なるのはもちろん「プラグに負担をかけたり、ノッキングの原因になることもある」のだそう。たしかにガバナー・スプリングは一度もチェックしたことがない。幸い、まだメーカーから純正のガバナーが購入できるため、これを機にリフレッシュしてみることにしたのです。

現在、セミトラ化しているためコンデンサーの配線は繋いでいない状態。万が一、出先でセミトラ・ユニットが故障した場合は、コンデンサーを繋ぎ直し配線を修正すれば走り続けられるため安心。

KZ1000は#2と#3、#1と#4にそれぞれポイントが付く2ポイントタイプ。そして回転数の上昇に応じてポイントカムがポイントのヒールに当たる(押し上げる)タイミングを早める(進める)のが、ベースプレートの奥にあるガバナー(自動進角装置)の役割。

ガバナーがあるのはポイントのベースプレートのさらに奥。クランク回転用の17mmナットを抑えながら、コンタクトブレーカー(ポイント)の取り付けスクリュー13mmを緩め、ベースプレートを外すとガバナーユニットも外れる。

[←]ポイントのベースプレートのさらに奥にあるガバナーとは“自動進角装置”という意味。クランクとともに回転するガバナーの軸には一部分が“山状”になっているポイントカムが付いていて、カム(山)がポイント・アッセンブリのヒール部分を持ち上げ、ポイント接点が“離れ”ることで、それを合図に点火が行われる。そしてガバナーが役割を果たすのは、エンジンの回転が上がり始めてから。

 

 

[→]指で無理やり開いてますが、広げている鍵状の先端には“重り”が付いていて、クランクの回転による遠心力で“重りが付いた鍵状”の部分が外側に広がり、それに応じて軸の外側にあるポイントカム(山)が進角側(クランク回転方向)に動き、点火時期を早めるという仕組み。そしてその遠心力に対して、進角具合を一定の反発力で調整しているのがガバナー・スプリングの役割。



つまり、ガバナー・スプリングがヘタってしまい適切な反発力を失っていると、せっかく点火時期を調整しても、エンジンが回り始めた途端に点火時期は不安定になるというワケです。アイドリングが不安定になるのはもちろん、遠心力に応じた進角具合も不安定になったりと……あらゆる場面で不具合が生じるということ。たしかに点火時期が適切じゃなければ、当然、燃焼状態も良くないためプラグに負担がかかったり、状況によってはノッキングの原因となってしまうのも納得なのです。もちろんエンジン自体にも良くないということ。

[左]使用していたガバナー[右]新品ガバナー。見た目にもややスプリングがヘタっているのが分かります。


[↑] 旧ガバナー・スプリング #1,#4

[↑]新品ガバナー・スプリング #1,#4
そもそもスプリング(両側の取り付け部分)の形状が若干違うため、どの部分がヘタってしまったのか!? 正確には判別できませんが、交換前のガバナー・スプリングは反発力が弱まってしまったようにも見えます。


[↑]旧ガバナー・スプリング #2,#3

[↑]新品ガバナー・スプリング #2,#3
こちらはそれほどヘタってはないように見えますが、実際どうなんでしょうか?

 


[↑]旧ガバナーのポイントカム

[↑]新品ガバナーのポイントカム
“段差”……とまではいきませんが、当然何百万回とポイントのヒール部分と擦れあっているカムにはやはり摩耗の跡がありましたが、まだ許容範囲でしょうか!? 現在メーカーからはスプリングやポイントカムを含めたガバナーがassyの状態で販売されているため、今回は全て新品に交換することにしました。




ポイントユニットとガバナーユニットを外した状態がこちら。これまでポイント周辺は一度もバラしたことがなく、電気&点火系に苦手意識もあったため、勝手に複雑な構造だと想像していましたが、意外と単純でスッキリとしていて安心。

取り付けもクランクシャフトに付くピンとガバナー裏面の溝を合わせるだけ。

ガバナーだけを取り付けた状態がこちら。


適切な点火時期は、ケース内上部に付く「合いマーク」と、#2,3、#1,4それぞれの「Fマーク」が同一線状に並ぶタイミングで、ポイントカムの“山”がそれぞれのポイント・アッセンブリーの“ヒール”を持ち上始めればOK。


調整はW1ユーザーさんが製作したという通称“ピヨピヨ”を使用。ポイントが繋がっている時には「ピヨピヨピヨ♫」と音が鳴り続け、ポイントが離れた瞬間に「ピヨピヨ音」が消えるコレがなんとも使いやすい!!

 


交換作業が終わり試乗がてらCLASSIC CYCLE TOKYOさんまで走り、念のためタイミングライトで点火時期を見てもらうと「ぼちぼちOKだと思いますけど、厳密に言えば#2,3側が線一本分だけ遅れてますね」と後藤さん。ということで微調整してもらいました。

交換後の変化はというと、キャブをどれだけ調整しても消えなかったスロットル開け始めにほんのわずかに発生していた「ガガッ」というグツつきが消え、ずいぶんラフにクラッチを繋いでもスムーズに発進できるようになりました。また、まさにジョニーズ・イトーさんの指摘どおりで、じつはこれまたどれだけキャブを調整しても消えなかった、負荷がかかった状態でやや大胆に(ラフに大雑把に)スロットルを開けた時に出ていたノッキングも見事に解消されたのです!! これはずっと悩んでいたのでほんと嬉しかった!!



先日、仕事終わりに横浜・都築にあるZ専門店のPAMSさんらと軽く夜の首都高を走り芝浦のスーパーレーサーまで行ってきたのですが、ガバナー・スプリングが適正になっただけで、これまで正常だと感じていた回転の上がり方さえまるで別物になったかのように、一切“淀みのないスムーズ”さに激変したことには驚きました!! これまで以上にグングン回転を上げて走りたくなる。いやぁ最高に気持ちいい。




昨年冬から始めたキャブレターのオーバーホール、そしてエンジン腰上のオーバーホールを経て、ぼちぼち慣らしも終わりキャブセッティングも煮詰まってきていたKZ。今回のガバナー交換でいよいよ仕上がってきました。やっぱりスロットルの開け始めの安心感が増えると、俄然オートバイは楽しくなるもんですね。