[KZ1000]ブレーキホースをブラッシュアップ。


先日取材や仕事の合間をぬって、KZ1000のずっと気になっていた部分をブラッシュアップしました。そのひとつがフロントのブレーキホースの交換。

納車時からメッシュタイプのブレーキホースが装着されていましたが、これをいわゆるメーカー純正タイプのラバーホースへと変更しました。純正タイプのラバーからメッシュへ……が一般的かもしれませんが、なぜ高性能とされるメッシュホースからラバータイプへ戻すのか!? その狙いは、もう5〜6年前になりますがSRでも立証済み。

こちらが納車時から付いているメッシュホース。破断したわけではないので、外して大事に取っておきます。

こちらが交換した純正タイプの汎用のラバーブレーキホース。

ステンレス製メッシュホースとラバー製ホースの違いは、ブレーキレバーを握りブレーキホース内部に油圧がかかった際、わずかに膨張するラバー製ホースと比べステンレス製メッシュホースは膨張しにくいこと。その結果、ラバーホースからメッシュホースに変えると、油圧が無駄なくキャリパーのピストンに伝わるため、ブレーキのレスポンスが良くなるのです。この「レスポンスが良くなる」を言い換えると、「レバーのストローク量が減る」です。つまり、それまでよりも少ないチカラ=浅い握りでも強い制動力が発揮されるということです。

というわけで、“ブレーキ性能UP”の名のもと、純正ラバーホースからメッシュホースに変えるのが一般的……とされていますが、ストリートユースの僕らに本当にそれが必要なのか!? まぁ色んな走り方がありますので、一概には言えませんが、少なくとも僕には不要……どころか、余計な性能でした。

SRでメッシュホースからラバー製ホースへ変更したのは2019年。その時のブログにもその理由は細かく書いてますので、ぜひご覧になってください→こちら

事前の見立てが甘く、50mmほど長いブレーキホースを購入してしまったためヘッドライトケースの奥でやんわりとUの字に取り回すハメに。まぁ見えない部分なので、とりあえずはこのままで。

僕のKZ1000は左右に各1枚ずつディスクローターが付くダブルディスク。マスターシリンダーからは一本のブレーキホースで、アンダーブラケットの部分で二手に分岐するスタイルです。今回は分岐前のブレーキホースをメッシュからラバータイプへ変更しました。分岐後はメッシュタイプのまま。


先ほど書いたように、ラバー製ホースからメッシュタイプへ変更すると、「レスポンスが良くなる」=「レバーのストローク量が減る」=「(ラバータイプと比較して)少ないチカラ=浅い握りでも強い制動力が発揮され」ます。つまり、逆にメッシュホースからラバータイプへ変更すると、その反対で「レスポンスが悪くなる」=「レバーのストローク量が増える」=「(メッシュタイプと比較して)大きなチカラ=深くまで握らないと強い制動力が発揮されない」となります。※こう書くと著しく性能ダウンするように聞こえますが、あくまでメーカー純正タイプに“戻す”だけなので、当然ですが常識的な制動力は担保されています。


ではその目的は何か? つまり、ブレーキのレスポンスを遅らせる意味とは何か?

それは、レバーのストローク量(握り始めからフルに握るまでのレバーの動く量=距離=時間)を増やしたかったから。メッシュホースからラバー製ホースに戻すと、当然ながら効き始めからしっかり効くまでの時間(レバーの動く量=距離)がメッシュホースに比べて、“増える”ワケです。KZでもSRの時と同様に、その“時間”が欲しかったのです。


昨年暮れに発売した『大人のコーナリング-2』でも触れていますが、安心してコーナリングするために覚えておきたい操作のひとつが、“離し側”のブレーキング(特にフロントブレーキ)。僕も長年そうでしたが、減速する時のブレーキのかけ方は、じわ〜っとかけ始め、停止する直前で一番強く握っている……ブレーキングでした。これだと信号等での停止では極端に言えばカックンブレーキのように、停止した直後に沈み込んだフロントフォークがぴょんと伸びて不安定になりますし、コーナー手前ではフロントに荷重が残り過ぎて、ライン取りもその後のオートバイを傾けていく時でもどうしても不安が残ってしまいます。


“離し側”のブレーキングはその逆で、減速時に最初に強くかけ(レバーを握り)、停止直前またはコーナーでリーンするポイントにかけて、徐々に弱めていく(レバーを離し、効力を抜いていく)ブレーキング。これを覚えると、コーナー進入時の速度調整もグッと楽になります。そして、いざオートバイを傾ける時には限りなくフロントブレーキをリリースしている状態のため、フロントに荷重を残し過ぎた時のような不安も解消されます。さらに慣れてくると、ブレーキのリリースタイミングやフロントへの荷重の残し具合の調整も不安なくできるようになるため、コーナリングの楽しさの幅がグッと広がります。

僕のKZ1000はスイングアームとリアブレーキ、リアホイールは’81年以降のJタイプに変更されています。小ぶりになったJシリーズのキャリパーに貼ってある純正KAWASAKIステッカーをイメージして、当時のディーラーステッカーを貼ってみました。

もちろんメッシュホースでもラバーホースでもやるべき操作は同じ。ですが、効き始めから最大効力を発揮するまでのレバーのストローク量=時間がある方が、当然扱いやすくなりますし、僕にとってはメッシュホースの短いストローク量だと好みの減速調整をするのがムズカシかった。さらに、軽く握っただけで強い制動力が発揮されるメッシュホースのレスポンスの良さにどこかビビっていた部分もあったため、ラバーホースにして不安なく強くレバーを握れるようになってからの方が、結果的に制動力も増したというお土産付きでした。

ブレーキホースの種類はともかく、この離し側のブレーキングは覚えておいて損はありません。なにより安全ですからね。というわけで、ブレーキはドラムよりもディスク派です。