[SR500F.I.]クラッチレバーの“遊び”、お好みは?? その2

写真ではプッシュレバー装着部分の“オイルシール上”に付くワッシャーが付いておりません……ハイ、装着時に忘れました。ご容赦を。

SRのクラッチ調整が手元(レバー部分)だけじゃないことは、もはやSR乗りならば周知のことですね……なんてエラそうに書いてますが、乗り出してから3年くらいまではじつは僕も知りませんでした。クラッチワイヤーをレバー側から追っていくと、クランクケース上部のシリンダー後方に辿りつきます。指で押さえているプッシュレバーと呼ばれるパーツのアーム部分が、クラッチレバーを握る=クラッチワイヤーを引くことで反時計側に引っぱられ、クラッチが切れる(=クラッチ板が離れる)わけですが、今回クラッチ周りをバラしたついでにその仕組みを写真に撮ってみました。

■クラッチレバーの“遊び”、お好みは?? その1はこちら


一番上の全体図の写真は、先ほどのプッシュレバーのアームの下の部分。つまりSRを真正面から見た時のクランクケース内部。

[上2枚の写真]がクラッチが繋がっている状態で、[3枚目の写真]がクラッチを切った時の状態になります。つまり3枚目の、プッシュレバーが45°ほど反時計方向に回転し、その分だけプッシュロッドを押している状態が、クラッチレバーを握りクラッチを切った時。順を追って説明すると……

1:クラッチレバーを握りワイヤーを引く

2:クラッチワイヤーにプッシュレバーのアームが引っ張られ、プッシュレバーが反時計側に回転する

3:回転したプッシュレバーが、プッシュロッド2(長い方のロッド)を押す

4:プッシュロッド2がプッシュロッド1(1円玉ほどのアタマが付く短いロッド)を押す

5:プッシュロッド1がプレッシャープレートを押し(=クラッチスプリングを縮めて)、クラッチが切れる(=クラッチ板が離れる)

というのが、一連の仕組み。

FI用のクラッチスプリングに変えると“クラッチが軽く”なる……その理由は、クラッチを切ることは、何枚ものクラッチ板を押さえ続けていた“バネを縮める”ことだから。


ここであらためてプッシュレバーの写真(モノクロ)。

マニュアルによれば、写真のように指でレバーを押し、クラッチの遊びをゼロにした状態で、赤線のようにプッシュレバーのアーム先端の中央とクランクケースに付く凸(ポッチ)が一直線上になる位置が正常な状態。僕も過去に経験ありですが、よくあるのはアーム先端中央が“凸部分より前方”に来てしまっている状態。その原因は、プッシュレバーやプッシュロッドの当たり面の磨耗とプッシュレバー位置の調整不足。そうした状態になると、いわゆる「クラッチが重たく」なり始め、クラッチの切れも徐々に芳しくなくなってきます。テコの原理でもあるので、ドラムブレーキのアームの角度と同じ話でもありますね。


プッシュレバーとプッシュロッドはこんな状態で、クラッチを切る度に、レバーがロッドを押す→戻るを繰り返しています。写真は今回交換したプッシュレバーですが、このように磨耗していきます。もちろんプッシュロッド側も。


プッシュレバーやプッシュロッドの当たり面が摩耗してくると、先ほどの正常な位置にならなくなってくるため、SRではプッシュレバーの“高さ”を変え、プッシュロッドとの当たり面を上下にズラす事で、何度か調整が効くようになっています。そのプッシュレバーの高さを調整するのが、偏心カムがついたアジャストボルト。ドライブスプロケット部分のカバーを外すと、プッシュレバーが入っている場所にプラスドライバーで調整するボルトが見えますが、コレが偏心カムが付くアジャストボルト。17mmのロックナットを緩め、時計回り/反時計回りに回すことで、偏心カムがプッシュレバーの高さを調整する仕組みとなっています。そのためSRでのクラッチの遊び調整(久しぶりの場合は特に)は、まずレバー部分ではなく、プッシュレバー側を確認してから……というのが正しい手順というわけです。

プッシュレバーと当たる側のプッシュロッド2の先端の磨耗具合。(奥が新品)

プッシュロッド1と当たる側のプッシュロッド2の先端の磨耗具合。(奥が新品)

同じくプッシュロッド2と当たるプッシュロッド1の先端の磨耗具合。(奥が新品)

偏心カムが付くプッシュレバー位置のアジャストボルト。もちろん奥が新品。

現在の走行距離は約11万キロちょっと。おそらく4万5000キロ時に500cc化した際に、クラッチ周りの部品も新品に交換されているはず(不覚にも未確認)なので、先日外した部品は約6万キロほど走行した後。ぞれぞれがそれなりに摩耗していましたが、アジャストスクリューの偏心カムが一番摩耗していました。でもココ、こんなに摩耗しますかね? 仕組みを知らない時代に、僕がグリグリと回し過ぎたんでしょうか?

次回へ続く。