sense of “GT”

旅のお供はダークブラウンのSIDE CARGO PACK。中身は一眼レフsetに取材道具と水筒と丸めたナイロンJKT。東北道から北関東道を経由し宇都宮上三川ICで降りたところ。

2025年、早くも9回目の栃木へ。これまでの8回は三脚や脚立といった撮影道具が必要だったり、早朝出発のスケジュールばかりで(3月4月はまだ寒かった)ずっとハイエースでしたが、やっとオートバイで行けました。距離にして約180km。2時間半くらいの行程。いつも往きは高速、帰りは下道なんですが、そのわけはこの3ヶ月で久しぶりに走った新4号バイパスの平均速度の高さと流れっぷりの良さは、ほんと高速要らずだったから。このパターンで往路と復路、よっぽどのことがない限り30分程度しか変わりません(帰りの浦和からは首都高)。

で、200〜300キロの高速移動となるとGTマシン、KZ1000の魅力をたっぷり堪能できる至福の時間。2回目の取材の帰りに教えてもらった、那須烏山から新4号バイパスまでの県道64号は少しコーナーも楽しめる峠道。大排気量のゆとりに身をまかせ、あっという間に140〜50キロ走った後にスポーツライディングも楽しむ……そんな’70年代アメリカ生まれのGT感覚を取材ついでに堪能するにはちょうどいい場所にあるのも那須烏山というわけです。


取材前に楽しみにしていたのが、素朴な昭和風情が残る那須烏山に似合う町中華、富士食堂。この日はタンメンと餃子。ちょっと二日酔い気味の日のタンメンほど美味しいものはありませんね。


駐輪・駐車スペースもありますよ。


取材目的地は那須烏山からさらに10キロほど北上した那珂川町にある〈BATOWL Cafe〉。メグロ & W系ユーザーさんの間ではすでに有名はカフェで、店内には新旧のメグロが4台、W1Sが1台展示されています。


おや? メグロといえば英車と共通の左フットブレーキ+右チェンジですが、BATOWL Cafeに展示されているジュニア250-S5はなんと現代標準の右フットブレーキ+左チェンジ!? なんとこのS5、プロトタイプとして作られた一台だそう。なんでまたそんな珍しい1台がココに!? その詳細は6月下旬発売のメグロ100周年本をご覧ください(笑)


さらに当時モノの作業着が壁に掛けられていたり、ふと横を見るとショーケースにメグロ250ccエンジンが3基も!? 並べてあったり……広々とした居心地の良い空間や美味しいご飯&ドリンクとは裏腹なマニアックな雰囲気も楽しめるオートバイ乗りのための憩いの場でしたよ。


外観はこんな感じ。オートバイもたっぷり停められます。気持ちよさそうなところでしょう? 天気も良く小春日和。ずっとここにいたくなるほど最高でした。店を出てからもダラダラしてしまいそうで危険です(笑)

ちょっと不便なところが癖になる。


『川魚水井』

ここは栃木県那須烏山市にある川魚屋さん。もうすでに創業してから100年を超えている老舗。つまり、戦後目黒製作所(戦時中に東京・目黒から疎開)の工場が稼働していた頃も当然現役の老舗川魚屋さん。そして、ここの向かいにはこれまた昭和風情をたっぷりと残した旅館ふくずみがあって、以前その旅館に宿泊したメグロZ7に乗る方が、翌朝エンジンをかけていると、川魚水井の旦那さんが出てきて「当時のメグロの音の特徴」を話してくれた、なんてハナシを聞かせてくれました。

聞けば、その旦那さん(水井忠さん)は若い頃にほぼ新古車のZ7に乗っていたそうで、ずいぶんZ7を懐かしんでくれたんだとか。那須烏山の町が目黒製作所で働く人たちのおかげで大いに賑わっていた1960年前後、まだ若かった忠さんは当時現役だったメグロZ7(500cc単気筒)を買ってもらい、その頃高級保養地でも知られていた鬼怒川温泉の旅館からうなぎやあゆの注文が入ると「やった、走れるゾ!」と、意気揚々とZ7で配達に出かけていたのだそうです。

現在、店を切り盛りするのは忠さんの息子の雅人さんで、これまたカワサキメグロ K2に乗るオートバイ乗り。そんなこともあってか、那須烏山が“メグロで町おこし”を始める以前から、ツーリング中に立ち寄るバイク乗りの方々も多いという、ちょっと変わった川魚屋さんがココ、水井さん。


川魚水井の看板商品は、うなぎとあゆ。どちらも絶品だけど、一尾260円というリーズナブルなあゆはツーリング中のバイク乗りにとってはソフトクリーム感覚で食べられて、小腹を満たしてくれるちょうどいい存在。つまり安くて、なおかつ食べやすい(立ち食いできてしまう)。炭火でじっくりと熱され、適度に脂が落ちた焼きたてのあゆは、頭から尻尾まで丸ごと食べられて、身もフワフワで驚くほどさっぱりしている。とくにアタマの部分はビックリするほどふわっふわ。

 


このあゆの塩焼きの美味しさがクセになって、ツーリング途中で必ず立ち寄るバイク乗りも多いんだそう。「〇〇時くらいに行くのでヨロシク」と、事前に電話注文をする常連の方もいるといいます。というのも美味しさの秘訣はあゆの新鮮さとその焼き加減。当然、炭火でじっくり……は重要ポイントで、注文から20〜30分ほど時間がかかるため、到着してすぐに焼きたてを食べたい常連さんにとっては、事前の電話もやはりマストなのだそう。


「バイクで町おこし」を掲げる市町村はいくつかありますが、ルーツがしっかりとある場所は全国でも珍しい存在かもしれません。

メグロ100周年記念本の制作を通して、今年に入ってからすでに8回? は訪れている栃木県那須烏山市、ちょっと面白くなりそうな町です。今年からバイク関連のふるさと納税も始まるようですし、訪れるたびに川魚水井さんのようなローカルでクラシックな食の発見もあって、通い始めた頃はアクセスの不便さに億劫な気持ちになることもあったけど、だんだんそれがクセになってきています(笑) 少しでも良い道はないものか……と思案するのもオートバイ乗りの楽しみですからね。

 

メグロとWを巡る旅、いよいよ終盤にさしかかっております。

多摩川住宅とメグロとW。〜続・続、メグロとWを巡る旅。8割終了?


多摩川住宅は1966年から’68年にかけて建設された、東京狛江市と調布市にまたがる昭和風情が残る団地。ここも一昨年くらいから再開発がはじまり、この春には隣のひと区画分に立派なマンション群が完成していました。

1966年といえば、カワサキW1がデビューした年。翌’67年には鮮やかなキャンディカラーのW1スペシャルが、いわゆる“ダブワンサウンド”を響かせたキャブトンタイプのマフラーで登場。それまでのモナカマフラーにはなかった、歯切れが良くて、弾けるような乾いた排気音。

初期W1に乗るユーザーも、その先代のメグロKシリーズに乗っていたユーザーも当時こぞってキャブトンタイプに変えたのでしょうか……という想像を膨らませて、昨日は多摩川住宅近辺でメグロK1の取材・撮影でした。

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