今回はW3(W1系別体ミッション)のクラッチ調整のおハナシ……なんだけど、じつはなにもダブワンに限ったコトでなく、W650のクラッチレリーズのアソビ調整も、はたまたクラッチに限らずドラムブレーキの操作アームでも、つまりケーブルやロッドで引っ張ることで何らか強いチカラを伝えて操作する“トルクアーム”の位置やアソビの調整の上で、結構カンジンなハナシをしたいと思ってマス。
さて上の図はストバイvol.182/2017年1月号(2016年10月24日発売)の“WWW.com”で紹介したドラムブレーキのトルクアーム調整のポイントだが、何のハナシかというと、トルクアームをケーブルやロッドで右方向に引っ張って作動させる際に、ドコでイチバン強い力を効率よく伝えられるかを表したもの……アームの作動角A=A’=B=B’だとしたときに、ケーブル(=ロッド)引き量(引き代)はa>a’=b<b’となるのだけど、そこに加わる効力となるとa<a’≧b>b’、つまりアームが引き方向に対して90度=直角になる手前が最も強く効果を発揮することになる。とくに、アーム角が90度を超えると引き角がどんどん広がり、テコと三角関数(?)の関係上、効力はどんどん弱まっていくばかりなのだ。なので、ドラムブレーキならチカラを加えてブレーキシューがドラム内壁に当たり、もうそれ以上動きませんというトコロが、アームの直角手前になるように。クラッチならば、クラッチレバーをグリップラバーに当たるまで引き切ったトコロで、ミッション側のレリーズアームが90度手前になるように、ケーブルやロッドの位置をまず調整する必要があるのだ。
それで、W1系別体ミッションのクラッチ(アソビ)調整だが、W1系に限らずこの手のミッションの場合、ミッション側のレリーズアーム/ケーブル中間のアジャスター/レバー側のアジャスターと、調整箇所は3つある……ところが、ニンゲンはそもそもがナマケモノなので、よくあるのが手元のクラッチケーブル・アジャスターでアソビ調整を済ませガチなのだ。それで、手元のアジャスターでの調整範囲を超えると、今度はケーブル中間のアジャスターでゴマカシ調整、その範囲も超えたらいよいよレリーズアーム…という順番で考えてしまいガチなのだが、じつはその逆が正解!?
クラッチレバーのアソビが増える原因を考えるとナットクがいくハズ……アソビが増える原因は2つ、“ケーブルの伸び”と“クラッチ板の摩耗”……とくにケーブルの伸びはインナーケーブル自体が伸びるコトもあるが、主因はアウターケーブル内壁との摩耗!!……クラッチケーブルはエンジンやタンクやメーター周りの隙間を縫ってレイアウトするので複雑なS字状態となり、インナーケーブルは引っ張られた時に最短距離の位置を維持するため、アウターのカーブした部分の内側と互いに擦れ合って摩耗してさらに最短距離になるため、わずかな摩耗分が伸びたように感じるアソビとなる。アウター内側やインナー表面がテフロンコーティング(濃い灰色)されているものは、コーティングが真っ先に摩耗するので、その厚み減少分がよく言われる“初期伸び”ととして現れる。
ケーブル内部の摩耗によるアソビ増ならば、中間+上部(手元)のアジャスターで調整すれば済むのだが、そもそものクラッチ板が摩耗してレリーズアームの理想的な位置・角度が前述の“90度”を超えてしまっていると、クラッチを切りきれてなかったりタッチが曖昧になって、半クラ状態が続くコトになってさらなる摩耗・滑りを起こしかねない!!!!……なので、手元のレバーのアソビが増えたと感じたら、まずはレバーを引ききった状態のレリーズアームの位置から確認していかなければならない。そして、その位置が90度を超えていたら、まず最初にレバーを軽く引いて、機械的(物理的)クリアランス分をなくした状態のレリーズアーム位置を調整し、その後でケーブル部分のアソビを中間→手元の順で調整していく、という手順となる。だから、普通に考える“逆”の順序が正解となってくるワケです。
さてこうしたアーム調整は、W1系のクラッチレリーズアームに限ったことではない。誰のオートバイにもある最も多い部分は、リアドラムブレーキのアームだし、当然同じような考え方・ポイントで考えて調整しなければならないので、是非ともチェックしてください。
ほかにも、W3にはちょくちょく手を加えているのですが、そんな報告をしようという矢先に、最後の難関、電気系がイマイチな感じになり、あれよあれよとドロ沼にハマりました。とにかく11月は電気タタリ月で、ネタが尽きません。その辺も含めて、また報告します。