次世代“W”ってハナシ、信じてないでしょ?…その4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、3回にわたってZ650RSの魅力として、“分かりやすいステアリング・レスポンス”だけに注目して、しかもそれが最新の基本構成や素材/マテリアルに近いわりに、’80年代初頭のレーサーレプリカが登場する以前のモデルに近いフィーリングだということをお話ししました。しかも、それが他社ヤマハR Z250/350を彷彿とさせるフィーリングだということもお話ししました。

このことには注釈が要りますね……“ヤマハRZを彷彿とさせる”とは、“似ている”とか“近い”という意味ではありません。以前やっていた専門誌ではこういった表現はゼッタイしないのですが、まあブログですから、僕の個人的な経験を踏まえてお話しした方がわかりやすいかと……特に、僕と同世代(昭和30年代/’60年前後生まれ)で、’80年バイクブーム以降の頃に、仕事や結婚、出産など人生の一大事が始まって、泣く泣くオートバイを降りた方々、つまり現在のリターン層には、アノ感動を再び皮膚感覚で実感できるオートバイと思ったのです。

専門のプロらしくお話ししますと、エンジンはネオ・ネイキッドZ650にも採用されてきた水冷4ストロークDOHC4バルブ並列二気筒/649cc・180°クランクという最新鋭のスペックを持ってます。インジェクションをはじめとする総合電子制御システムによって、50kw(68PS))/8000rpm・63Nm(6,4kgf-m)/6700rpmを発揮し、吸気口径などの設定を低中速重視としているわけですが、特筆すべき特徴は、エンジン特性の“2面性”です。

具体的には、エンジンが6000回転を境に、異なる性格をしていること。6000回転以下では、実に扱いやすいツイン・エンジンの様相……180°クランクの不等間隔爆発でありながら、低中速重視のエンジン設定に加えて、適度に配したバランサーのおかげでで、ショートストロークでありながらロングストロークかと思わせる粘りのある豊かなトルク感、そしてスロットル操作に対する穏やかなエンジンレスポンスに相まって、二気筒らしい振動というか鼓動感とともに、じつに扱いやすいツインエンジンの特性を実感できます。

この辺りがW1系やW650/800系のファンでも納得のいく二気筒らしさとも言えるのですが、6000回転に近づいてクランクの回転ナーシャ(慣性力)が乗ってくると、ツインの鼓動感は薄れ、軽く鋭い吹け上がりと加速力を見せます……もう、その辺りではツイン感はなく、むしろ4気筒か2ストローク・エンジンのような吹け上がりなのです。

軽量コンパクトな車体を持て余すことはない。コーナー進入のシフトダウンも、スリッパークラッチのおかげでじつにスムーズに行こなえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

コーナー立ち上がりも、6000rpm以下のコントローラブルなトルクを使って、安心してしっかり曲がりこめる。直線に出る頃に6000rpmを超えれば、昔の2ストさながらの鋭い加速も楽しめるという2面性。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうお分かりですね、これがRZ250/350を彷彿とさせる部分……6000を境に性格を変える二面性が、電気デバイスが付いていない初期RZの2ストローク・フィーリングを思い出させてくれる……とは言っても、基本は4ストロークエンジンなので、2ストの反り上がるほどのネガな緊張感は感じさせない、管理の行き届いた安心感が終始あるのでご安心を。しかも、スリッパークラッチ搭載で、シフトダウン時のエンブレの衝撃も実にマイルドで、最新技術がずいぶんラクで楽しいものにしてくれます。

さらに言えば、車体が大きすぎず、重量も小さく軽快で、その上徹底した“マス(質量)の集中”によって車格的にも中型車かと思わせるコンパクトさに感じさせるので、パワーを持て余すこともないし、力不足なんてことは微塵も感じさせないのです。

そして、3回にわたって言ってきた“穏やかなステアリング・レスポンス”によって、じつに分かりやすい=把握しやすい=安心感いっぱいのフロント周り……この分かりやすさ・把握しやすさは、穏やかなステアリング・レスポンスに加えて、付いた“舵角”がバンク角に応じてしっかりとした量があって把握しやすく、前後17インチ・ラジアルタイヤなので、前後合わせた全体のハンドリング・フィーリングはまさに旧車感たっぷり。17インチ・ラジアルでもこういう旧車のフィーリングにできるんだ!とちょっとした驚きさえ感じました。

photos by Kouichi Ohtani

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

じつは、試乗撮影の後、シバハラと2人で真剣に“購入”を検討しました。シバハラはカワサキプラザに電話してローンの話を聞いたほどです。でも現在、世界情勢などの影響で生産&供給がまるで間に合っていない状況で、今季はプラザ1店でも数台という割り当て予定とのこと……僕らには、そうはいっても乗ってるオートバイがあると思うと、これから乗ろう!再び乗ろう!と真剣に考えている、特に50歳以上のリターン層ユーザーさんにまずはぜひ乗ってほしい、と思って、見送ることにしたくらいです。

オートバイはいつの時代でも、作った人、設計した人の意思や気持ちがあって成り立っているものです。そうはいっても、昨今の経済事情などの影響もあって、その差が分かりにくい似かよった新型モデルが多い中、このZ650RS際立った個性を放っている新型モデルだと思いました。その個性が、必要十分な最新技術によって構築された“現代的旧車感”だと思います。まさに、そこがリターン層の心情に打ってつけの魅力だと思います。

そんな意味も込めて、Z650RSは“次世代W”と考えてもいいんではないか? それくらい、新型にしてはじつに珍しい、個性的なオートバイなのです。日常的にソバにあってほしいと思える、それだけでも十分“W”じゃないでしょうか。

上の青空バックのカットを撮影している時、ふとアタマに降りてきたストーリーを、インチキ小説にしてみました。650と65をテーマにしたストーリーは、「ZAPPER」(サンエイムック)の中に4Pで掲載してます。

Z650RS発売を機に製作した“ZAPPER”本。ザッパーはZ650のことではなかった!!?? サンエイムック/1200円。

 

in YAS by YAS.