Z650RS次世代W説・追補版/現代的旧車感とは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Z650RS次世代W説の最終回で、“現代的旧車感”という表現をしましたが、イマイチ分かりにくい、ニュアンス的すぎる表現だったとハンセーしまして、僕の思う“現代的旧車感”について、もう少し深ボリしておこうかと思います。

“現代的旧車感”を理解していただくのに、まず重要なポイントは“旧車感”です。旧車な感じ…って、何のことだろう?……とゆーところを、4回に分けて説明してきたわけですが、つまり“ステアリング・レスポンスが穏やか”=フロント周りに、車体の傾斜角に応じた舵角がつく、その反応が穏やかで分かりやすいということです。実際に旧車と言われるの’60〜’70年代のオートバイでは、そのステアリングの反応がゆっくりで、しかもその舵角もハッキリ認識できるくらい大きい……重量のあるフロント周りの変化が大きいのだから、時間がかかるのも当然。量(…移動距離や角度)=時間なのです。

でもその掴みやすい“量・距離・角度・時間”があるから、いつもオートバイが自分の感覚の範囲内にある“安心感”が大きい。手の内にある安心感が大きいから、これをしてみよう、アレもしてみよう、と積極的な夢・可能性・挑戦が広がる、というものです。

これがレース&レーサーのパフォーマンスから生まれたオートバイと、そうではない、レース使用が前提にないところで設計開発されたオートバイとの決定的な違いとも言えます。僕が言う“旧車感”の大半はこの部分でもあります。

実際に、’80年代以降の、スポーツ性を意識した設計のオートバイは十中八九、レース・テクノロジーを何らかの形で下敷きにしています。もちろん、それ自体は悪いことではありません。そのレースから得た技術によって、大きく進化発展したテクノロジー……例えば、エンジン性能もサスペンションもタイヤも、めざましく進歩して安全&安心が大幅に向上してきたのはそのおかげでもあるわけですからね。

ただ、’80年代当初はその流れでも良かったのですが、それが技術的進歩が進んだ’80年代後半あたりから、雑誌関係も分かってる風味でアレコレ記事にするから、読者(=ユーザー)も専門知識&用語だけの思考や会話が進み、本当の意味を理解したわけでもないのにどんどん思考・会話が一人歩きしていきました。そうこうしている一方で、メーカー側は常にサーキット・パフォーマンス重視で新型モデルを開発することが売れ行きにつながるとして、’90年代以降はレーサーレプリカ(→ロードゴーイングレーサー)→スパースポーツと。市販車をどんどん先鋭化させていった結果、一般ユーザー離れが顕著になっていきました。

そして’90年代後半から00年代初頭にはレーステクノロジーからのフィードバック満載として、カウルを剥ぎ取って楽なライポジにした“ネオネイキッドモデル”ばかりがラインナップされる傾向になってきたわけです。まあ、そういうことが好みのユーザー層もないわけではないですが、ちょうどその頃から、いわゆる“旧車ブーム”に拍車がかかっていったのです。

もちろん、さまざまな要素要因が絡んでいるハナシなのですが、新車・新型モデルに魅力がない…と言われ始めた頃からの流れをざっと説明すると、そういうことなのです。ポイントは旧い新しいのハナシではなく、ユーザーの日常使用の観点からすると、手に余すほど行きすぎちゃった新型モデルばかりになった…という現状だったわけです。

僕がいう“旧車感”とは新旧の話ではなく、じつは一般ユーザーが本来一般道を走って楽しむ日常使用領域で必要とされる要件のこと。それ自体はユーザーの日常使用がめざましく進化向上しなければ、必要要件も進化発展する必要はないはずなのです。そして、それは技術的に行きすぎてしまった新型モデルが、ごく少数だけが楽しむサーキット走行やレースでの結果を前提にしているうちに、日常使用で必要な要件が忘れ去られ、結果的にその要件をすでに持っていた旧車が俄然人気者になるのも納得のいくハナシなのです。

ところが、そんな果てに登場したZ650RSは新型モデルでありながら、そうした日常使用領域で必要な要件が備わっていると感じたので驚きでした。しかも、(繰り返しになりますが)マス集中を意識して新設計された軽量コンパクトな車体+前後17インチ・ラジアルタイヤという最新技術で構成されたモデルにもかかわらず、旧車が魅力として持ってきた日常で必要な要件も兼ね備えている…となると、それはもう驚きの新型モデル、まさにそれが“現代的旧車感”という表現がピッタリの内容なのです。

W650/800だって、同じような要件を備えているから、ダブワン系と同様の根強い人気を誇っていると思います(…僕も実際にW6ユーザーでもありますしね)。でも、やかんタンク、空冷エンジン、F19/R18のバイアスタイヤ、2本ショックなどといういかにも旧車然とした外観的要素が、いま乗りたいオートバイとしてはイマイチと感じる方も少なくないでしょう。

そこまで旧車志向じゃない(…あるいは、そんなに旧車志向ならダブワン系にしたいけど、ホンモノの旧車となると気をつかうし)…むしろ、もう少しイマな感じがあるほうが気がラク…つまり新しい側にも旧い側にもトンガリすぎない、ちょうどいいバランスの現代的な“普通のオートバイ”……じつはそうしたオートバイを求める、リターン組を中心にした“サイレント・マジョリティ(潜在的多数)”が求めるオートバイなのでは? そんなことまで考えてしまうほど、じつにちょうどいいオートバイがZ650RSと思う、というハナシなんです。

 

Z650RS発売を機に製作した“ZAPPER”本。ザッパーはZ650のことではなかった!!?? サンエイムック/1200円。

ふとアタマに降りてきたストーリーを、リターン層をテーマにしたインチキ小説にしてみました。650と65がキーワードのストーリーは、「ZAPPER」(サンエイムック)の中に4Pで掲載してます。

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