うっかりしてました、大人のオートバイ・チャレンジの内容解説が途中になっていましたね。さっそく第4章・フロントフォークについてお話ししましょう。
皆さんの多くが、“フロント周りがハンドリングを決めている…”あるいは“ハンドリングといえばフロント周りの挙動のこと”とカン違いをなさっていませんか?……エエーッ!!!!!!! ハンドルバーを手で持つこともあって、“ハンドリング”なんて言葉が“手”による操作とカン違いさせやすいこともありますが、正確には、ハンドリングとは“操作”あるいは“操作による総合的な結果”のことです。
実際に、ハンドルに伝わるフロント周りの挙動は手に伝わるだけあって敏感に捉えられがちで、そのためこれまた多くの方がフロント周りセッティングをシビアに考える傾向にもあります。しかし、フロント周りのセッティングはリア側ほど重要ではありません!!!!……なぜなら、重量的にみれば、エンジンをはじめとする車重の大半に加え、運転している自分自身の体重もリア側に乗っかっているのに対して、フロント側にはその車重+自分の体重の1/3〜1/4しか乗っかっていないわけだし、構造的に考えていくと、フロント周りに設定されているアライメントの関係上、前輪はリア側の動きに追従する(=遅れてついていく)構造になっているからです。
いくらブレーキング(制動)時)には慣性力の働きでフロント側に荷重が移る…といっても、世界GPで見られるような“フロント一輪車”のようなフルブレーキング状態になることはまずはないですし、そうでもしないならばリア側にもちゃんと荷重は残っているものだから、まずは運転手の“自分”が乗っかっているリア側のほうが大切なのです。
だから、フロント周りは操縦・運転に支障がない程度にしてあれば、まずはリア側を思いどおりの状態・セッティングにしておくことが重要なのです。そしてその後に、敏感にも感じていたフロント周りのセッティングをすればいいだけのことなのです。
その時に重要なことは、フロント周りといっても、“フロントフォーク=サスペンション”+タイヤからできているので、リア側の第1章・サスペンションの話と第2章・タイヤ、の内容に関してはそのまま違いがありませんので、まずはしっかりと踏まえておいていただきたいのです。
その上で、フロント周りにはさらに“2つ”の要素・ファクター”を加えて考える必要があります。その1つは、フロントフォークの大半がスプリングまで内包する密閉型サスペンション構造のため“空気バネ(エアスプリング)”の効果が加わる=利用できること。そして2つめは、“前輪は車体(リア側)に追従する車輪”とするための構造=アライメント=キャスター&トレールの効果が加わる=利用できること……この2つのことを知って“自分好み”を追求することにおいてさらに明確に、手の敏感さにも幅広く対応できることを覚えておいてほしいのです。
ところこれまで、この辺りのこととなると“迷信”なるものが、特にネット環境が普及&充実してくるにつれ、まるで“雨後の筍”のようにニョキニョキと出てきて、マコトしやかに語られるようになっているのが現状のようです。その代表格が“Fフォークを突き出すことでキャスターを立てる”ということと、その狙いが“クイックなハンドリング”という2つ……いかにも、言葉アソビから生まれた迷信のニオイがします。
まず、Fフォークの(トップブリッジからの)突き出しはそもそも狙いが違います!!……本当の狙いと効果はFフォーク・セッティングの結果ののちに、フロント周りの高さ・位置を合わせる=車体の前後姿勢の調整が主目的で、キャスター角を変える効果は大して得られません。考えてもみればわかることですが、ホイールベース(軸距)1500mm(=1.5m)前後に対して、5mm前後の突き出しでキャスター角が何度変わるのか?…0.1度も変わるかどうか⁇⁇…まず変わらないでしょう。
しかし同じ5mmでも、大きな効果を発揮するのが、フロント周りの高さの違いと、トレール量の変化なのです。“フロント周りの高さ”は、ハンドリングの土台となる軸=後輪の接地点からフロント周りに向けた軸=車体が向かう方向(=ロール軸)を決定づけ、さらに、ハンドリングに大きな影響を及ぼすエンジン高=クランク位置=重心位置が変化するので、数mmのフロント周りの高さの違いがとても重要なのです。
しかも、キャスター角が大して変わらなくとも、トレール量の数mmの変化は、フロントのステリング・レスポンスのフィーリングを大きく変化させます。カンタンにいえば、キャスター角の(ごくわずかな)減少=トレール量の(大きな)減少=舵角(車体が傾いた時に前輪が切れ込む角度)の減少がセットで同時に起こるわけです。
ココにもう一つの“迷信”が生まれているのですが、舵角の減少=クイックなハンドリング、というカン違いです。
ハンドリングがクイックになる、というのは、車体が向かう方向を素早く変更・変化させること。舵角が減ることで、舵角が付き終わるまでの時間が短くなることが、車体の向きを素早く変えることにはならないからです。舵角の変化が少ない&早い=クイック…とはならないという話です。
とまぁ、フロント周りには、誰でも自分の神経が敏感なだけに、色々な挙動を神経質に捉えがちで、それが故にモノゴトを冷静&論理的に判断できず、さまざまな“迷信”が生まれてきました。そして、そうだと信じきって何十年、という方が意外に多くいらっしゃいますが、ここらで一回知識と感情を整理して考えてみませんか?
そんな本ですので、今からでも遅くないので、ぜひトライしてみてください。