第43回 『英車の集ひ』 2024-11-2〜3 @伊予ロッヂ, 清里, 山梨〈その1〉


■Event Report
第43回 英車の集ひ 〈その1〉
2024-11-2〜3 @伊予ロッヂ, 清里, 山梨

第43回を迎える『英車の集ひ』。その名のとおり老若男女、イギリス生まれのモーターサイクルに魅せられたオートバイ乗りたちが年に一度“集う”ミーティングが、今年も11月2〜3日に山梨県清里にある、伊予ロッヂで開催されました。

この『英車の集ひ』が初めて開催されたのは43年前の1982年。20、30代で参加し始めたヒトは早60〜70代という由緒ある旧車ミーティングのひとつで、専門店も少なく、英車が今以上にマイナーな存在だった当時から英車一筋、まだまだ現役でゾッコン……なんてベテランの方々が大事に育んできた集まり。

バイクライフを支える仲間、情報、楽しさ、喜びを手に入れ、絶好のバイクシーズンにツーリングに出かけるきっかけにする。そうして長年続いてきた『英車の集ひ』は、一方で、3年前から主催者が代替わりし、数ある旧車ミーティングの中でも、ベテランと若手が上手く融合しているミーティングでもあります。

といわけで今年も、初回から参加し続けるヒト、久しぶりに参加するヒト、数年前から参加し始めたヒト、初めて参加するヒト。英車じゃないけど、英車に興味があるヒト……等々、多彩な顔ぶれが集まった2日間でした。


開催地は八ヶ岳の麓、山梨県清里にある伊予ロッヂ。昔ながらの作りと敷地内の砂利道と木々がクラシックバイクに似合うんです。初日の土曜日は夜中まで雨だったため、今年の二次会は部屋でしたが、夜は焚き火を囲み、英車を眺めながらお酒も飲める素晴らしい場所。写真は最高の秋晴れだった翌日の日曜日。晴れればご覧のとおりのロケーションです。


聞けば、約40年も続いていると、その年、あるいは数年にわたって、集まる車種や年代に特徴もあったりするのだそう。トライアンフ・ツインが多い時、BSAゴールドスターがやけに集まった時、妙にベロセットが多いなぁなんて時……毎年、各地から60〜70台はやってくるため、基本的には1930〜’70年代まで、様々なメーカーの、そして多くの英車に出会えるのですが、長年参加していると誰かが示し合わせたワケじゃないのに、『英車の集ひ』の中でのちょっとした流行りのような流れもあるのだそう。


そうした意味では、ここ数年目立っている存在は戦前モデルを中心としたシングル(単気筒モデル)かもしれません。あまり身近に走っていない印象ですが、これがまた元気よくフツーに(下道も高速も!)走るんです。では、イベントの様子を見ていきましょう。

伊予ロッヂには屋根付きの駐輪スペースが2ヶ所あるため雨天でも安心。


イギリス製オートバイといえば、トライアンフ、ノートン、BSAの2気筒モデルがポピュラーな存在で、シングル(単気筒モデル)というと途端に希少車に聞こえてきます。

実際に1950年代後半から’60年代に生産されたトライアンフを中心としたツインは、戦後主要マーケットだったアメリカで大量に販売されたことや、テレスコピックフォークにスイングアーム+2本サス等、その後の国産オートバイのモデルになったスタンダード然としたスタイリングもあって、日本人にとっても馴染みやすい英国旧車の筆頭でした。


しかし一方で、英車の歴史を遡ると……その歴史が始まった1900年初頭から1930年代まではシングル全盛期。黎明期には100〜200ものオートバイメーカーがあり、どのメーカーも単気筒エンジンで試行錯誤していた時代がざっと30年は続いていたといいます。多くのメーカーがしのぎを削りながら同じエンジン型式で約30年……当然ながら進化・熟成しまくっているワケです。よくよく考えれば、こうした歴史をもつオートバイは英車しかありません。


アメリカでもH-Dとインディアンを中心に、Vツインエンジンも独自の発展を遂げましたが、メーカーの数も含めて、競い合いながら進化熟成を繰り返してきたという意味では、そして現在も戦前モデルでさえもリプレイス部品が豊富にあるという意味では、やはり英車には敵わないのではないでしょうか。国産ではHondaカブ(50cc)やYamaha SRのエンジンが40〜50年と長く生産され続けましたが、これまた競い合いながら進化熟成したというワケではありませんからね。


さらにいえば、イギリスでは1930年代までの試行錯誤の時代にすでにフラットツインも並列3気筒も、4気筒では並列はもちろんスクエアフォーまで……ありとあらゆるエンジンレイアウトがすでに存在していたというから驚きです。おまけに水冷2ストロークもあればベベルギア駆動だってあったといいます。もはやオートバイの構造的進化という意味では、第二次大戦前までの英国でひと通り完成していた!? なんて見方もできるほど。


知らないと近寄りがたい骨董趣味的な雰囲気をもっていますが、ひと通り手を入れ、オーナーがそのオートバイに慣れてしまえば、ほんとにまぁ丈夫だしよく走る。そんな姿を今年もたくさん見せつけられました。だってヤマハSR500よりも鋭い加速をしながら、高速でも平気で100〜110km/hで巡行してしまうんですから。関東はもちろん関西方面からも、多くのオーナーさんが自走できているのも納得なんです。


ちなみに今年は、戦前といっても第一次大戦前!? というアンティーククラスの英車を拝むこともできました(さすがに自走ではありません)。こちらはなんと1911年製というアビントン・キングディック(ABINGTON KING DICK)。オーナーの水谷さんは、以前アサマミーティングでも何度もお見かけしたことのある方で、いつも衣装も含めて皆を楽しませてくれる愛好家。このアビントン・キングディックは、専用レバーを使用して手動でクランクを回すエンジン始動方式で、エンジンがかかった時には思わず皆さんで拍手し盛り上がりました。


こちらはその翌年、1912年製というラッジ・マルチ(RUDGE MULTI/500cc)。
オーナーの加藤さんは、さらに1914年製のトライアンフ・ジュニア等と参加し、多くの人を楽しませてくれました。

では、日曜日に行われたショートランの模様は、次回「その2」で。



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第41回 英車の集ひ 2022-10-15&16 @伊予ロッヂ, 清里, 山梨


[Event Report]

—41st 英車の集ひ—
2022-10-15&16 @伊予ロッヂ, 清里, 山梨


41年目の新たな門出!?
日本で育まれる“英車乗りの伝統”はまだまだ続きます!!

1982年(昭和57年)にスタートした〈英車の集ひ〉。約40年前に“集い”はじめた当時からの参加メンバーはもう70〜80代の大ベテラン。それでも多くのヒトが“もっと年上”のオートバイとともに何百キロも走ってやってくるもんだから毎度、英車にも英車乗りにも驚かさせるワケですが……とはいえ世代交代も必要ということで、今年から主催が若手(といっても何年も参加している40代の英車マニア)にバトンタッチ。伝統を引き継ぎながら、装いも新たに、そしてよりブリティッシュ感も増して新たな門出をきった〈英車の集ひ〉、今年も参加してきました。

 


会場は八ヶ岳の麓、清里高原にある民宿、伊予ロッヂ。宿泊施設の前には広いスペースと屋根付きの駐輪スペース、さらに到着後や宴会後に談笑できるウッドデッキまである、一泊のバイクミーティングにはうってつけの場所。また芝生がクラシックな英国車に似合うんです。

 


きまった集合時間はなく、基本的には夜の宴会までに到着すればいい、という〈英車の集ひ〉……ですが、日が落ちないうちに到着し、ひとっ風呂浴びてビールとともに英車を眺め、バイク談義……なんてのも皆さん定番の楽しみ方。

所狭しと小屋に並べられた参加者の英車たち。じっくり堪能するには、やはりお酒が入っていない宴会前がベストです。


戦前モデルにビンセントにゴールドスター……駐輪スペースの小屋はちょっとした博物館状態。しかもどれもが走る状態だから、ある意味博物館以上です。


すでに到着後のかけつけビールを飲み終え、スコッチ&ウイスキーなんて参加者もちらほら。すっかり日は暮れましたがまだまだ宴会前。秋の涼しい夕暮れ時にほろ酔いで英車談義……たまりません。


というワケでようやく宴会。今回から主催を任された稲垣さんの挨拶でスタート。

稲垣さんは40代半ばですが、戦前モデルを自ら輸入し整備・レストアして楽しむマニア中のマニア。知識も経験も豊富で好奇心・探究心もヒト1倍。数週間前には約1ヶ月ほど渡英していて、本場イギリスのクラシックバイク仲間とツーリングを楽しんできたとのこと。ちなみにクラシックバイクに限らず、スコッチ&ウイスキーにも目がないほど英国文化にどっぷりで、〈英車の集ひ〉にも毎年極上のスコッチ&ウイスキーをもってくる筋金入り。※稲垣さんの部屋は宴会後“ウイスキー・コロシアム”と化し、今年も深夜4時ごろまで宴は続きましたw


そんな稲垣さんが今年から用意したのがこの横断幕。そう、これまでは翌日朝食を食べたらそのまま現地解散でしたが、今年からは解散前にショートランを加えた新しい試みがスタートしたのです。


最年長の大ベテラン、大阪の坂上さん(80代!!)は今年はヴィンセントで参加。たしか数年前に取材した時には、「もう断捨離や、これ以上は増やさない」みたいなことを仰っていたはずでしたが……英車への好奇心はまだまだ衰え知らずようです。それにしてもレザーのモーターサイクルJKTにロングブーツ、バイクだけじゃなく服装もしっかり楽しんでいるのがかっこいいですね。英車乗りの方々の魅力的なトコロです。


年式の古い順に出発し、紅葉がはじまりだした八ヶ岳の麓のカントリーロードをショートツーリング。参加者が走り終えたら、主催者チームが後に続きます。


今回は第一回ということでコースも短めでしたが、徐々に延ばしていくそうです。
皆さん、いいペースで走るもんだから、写真がブレブレですみません。


やっぱり皆で走った後はあちこちで話が弾みます。


以前取材させてもらったこともある名古屋から走ってきたSさんのコマンド。雰囲気最高なサイドバッグは、着古したワックスコットンJKTを解体し再構築した自作品。昔から英国では孫の代まで修繕を繰り返しながら受け継がれる……なんてハナシも聞くワックスコットンJKT。こうした引き継がれ方もいいですね〜。僕もお願いしたいくらい。


ベテランの方々のここ数年は話題は、いつまでキックスタートが出来るか!? 四国の御大が乗るゴールドスターもキックと併用して装着したセルスターターが話題になっていました。いつまでも楽しく乗り続けるためにはセルスターターも大切、と感じるまで乗り続けていたいものですね。


毎年どのバイクも絶好調な稲垣さん率いる戦前チーム。これだけの台数が実際にツーリングしている様子を見られるだけでも貴重ですが、誰もが平気な顔で「フツーに高速も走ってこれますよ」と笑っているからさらに驚かされます。でも、音を聞いているだけでも伝わってくる調子の良さ。1920〜30年代にすでに全盛期を迎えていたとも言われる英国車、ハマったヒトほど「シングルの魅力に取りつかれる!?」なんて噂がますます気になってしまいます。それにしてもただでさえ操作が複雑な戦前車……皆さん4時まで飲んでいたとは思えません(笑)


春のブリティッシュランを主催する神戸の朱山さんは今年ゴールドスターで参加。いつも気さくな笑顔で若手とベテランを繋いでくれる貴重な存在の大先輩です。



クールなスタイルの2台のコマンド・ファストバックはオーナーもスタイリッシュ。もうなんだか英車が元気よく走り去る光景が当たり前……だんだんノートンのコマンドシリーズが新しく見えてくるから参ります。


というわけで、皆さんそれぞれツーリングを楽しみながら帰路につきます。

主催を無事にバトンタッチした来栖さんと稲垣さん。

「無事に引き継ぎは終了!」と、これまで〈英車の集ひ〉を主催してきた栗栖さんもひと安心の様子。

一昔前まで日本では壊れてアタリマエと言われていた英車を、クラシックバイクの文化が根付く本場イギリスと同じように、しっかりと直し、英車がもつ本来の性能を味わうことを追求し楽しむことを続けてきた〈英車の集ひ〉。さまざまな旧車ミーティングのなかでも、主催の引き継ぎだけではなく“次世代”がこれほど“前向き”に参加しているミーティングは〈英車の集ひ〉だけようにも感じます。

今でこそ各地に専門ショップもありますが、それでもきっちりと楽しむにはそれなりの知識や経験が必要なクラシックバイクの筆頭。そんな英車だからこそ、若手と言われる参加者の誰もが、日本の英車文化を育んできた〈英車の集ひ〉に敬意をもっているのかもしれません。敷居が高そうな旧車ミーティングにも見えますが、実際は終始そんなことが伝わってくる気持ちのいい空気感に包まれています。


また来年もよろしくお願いします。

 

 

 

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