[KZ1000]ステムって意外とカンタンにねじれる!?

※写真は最近のモノなので、フォークもステムも正常。当然タイヤも真っ直ぐ前を向いてます。

これまた少し前のハナシ。

KZ1000での通勤途中、編集部近くの路地で僕の前をノロノロ走っていたワンボックスカーが突然停車、からのバックランプ点灯!? 慌ててクラクションを鳴らすも、運転者が気づいたのはワンボックスカーのバンパーとKZのフロントタイヤが「ゴンッ」と当たってから……。

ぶつかったのは、バンパーとフロントタイヤ。勢い的にはアクセルをほとんど踏んでいない速度で、ぶつかり方も真っ直ぐ。クルマにもバイクにもぶつかった形跡が探してもわからない程度の事故でした。幸い運転手さんもバイク乗りで、「これくらいの事故でもフロントフォークのインナーチューブが曲がることもありますからね、バイク屋さんで調べてください」なんて話ながら事故処理を済ませたのでした。

速度はゆっくりだったとはいえ、僕が無意識にフロントブレーキを握っていたこともあり、少し心配していましたが、調べるとやはりインナーチューブのわずかな曲がりが確認できインナーチューブ交換となったワケですが……問題はその後。

 

※写真は最近のモノなので、フォークもステムも正常です。

当時整備をお願いしていたバイク屋さんと相手の保険屋さんの話も済み、丸く収まったと思っていたのですが、その後、真っ直ぐ走っていると……なんだかカラダが歪んでいるような気持ちになるゾ……と。で、さらによくよく調べると、曲がっていたインナーチューブを交換したにもかかわらず、ハンドルを真っ直ぐな状態にした時に、フロントタイヤがわずかに“左を向いている”状態だったのです。

その原因は、ステム。つまりトップブリッジとアンダーブラケット(どちらか、もしくは両方)のねじれだったのでした。

普通ならインナーチューブを交換した後にすぐ気がつくハズなんですが……インナーチューブを交換した安心感と、トップブリッジやアンダーブラケットなんて歪むハズがない!! なんて勝手に思い込んでいたため、なかなか気がつきませんでした。相変わらず鈍感というか自分が残念……。


気がついてしまったら即作業というわけで、仕事終わりに編集部下のガレージでフロント周りを外します。何度もフロント周りの脱着作業をしているSRはセンターバランス式のメインスタンドなので、フロントタイヤを外せば自然とリアタイヤが接地してくれるため、カンタンな作業であればジャッキ等は必要ありませんが、重たい1000cc4気筒エンジンのKZはさすがにそうはいきませんね。ジャッキをかましながら慎重に作業を進めます。

編集部下の狭いガレージで夜な夜な作業。外したステムと2本のフロントフォークは、翌日リュックに入れてSRでモトショップ梶ヶ谷へ運ぶのでした。当然ながら外してみるとズシッとけっこうな重量……バイクで運ぶのはなかなか大変でした。

KZのフロント周りをバラすのは初めてだったので、マニュアルに沿って順序どおり作業すると、驚くほどあっさり作業は終了。あらためてマニュアルさすが!! なんて当たり前のことをしみじみと実感。慣れてるヒトなら大丈夫なんでしょうが……SRと同じだろ〜なんて勢いで作業しなくてよかった〜。

で、外したフロントフォークとステムの確認・修正は、フレームやステムの修正で定評のあるモトショップ梶ヶ谷さんへお願いすることにしました。

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ここからはモトショップ梶ヶ谷さんから送っていただいた作業写真で進めます。

■インナーチューブ計測

念のため、交換したインナーチューブも計測。曲がりはなく正常でした。

■トップブリッジのねじれ確認

まずはトップブリッジに修正用インナーチューブを装着し、専用の四角い治具で計測。正常であれば、治具とインナーチューブは四箇所、同じように接地します……が!? 写真じゃわかりづらいのですが、向かって左側が接地していません。とくに⬇︎の場所では治具が接地していないことが、かろうじて写真でも確認できます。

○修正後

修正後、4点接地。

 

■アンダーブラケットのねじれ確認

続いて、アンダーブラケットのねじれを確認。こちらもトップブリッジと同様に、向かって左側⬇︎の場所が明らかに接地していません。

○修正後

修正後、しっかり接地しています。

■ステム・シャフトの確認

アンダーブラケットの修正が終わった段階で、トップブリッジをステムシャフトに通すと、ステムシャフトは左上方向に寄っている(曲がっている)ことが判明。⬅︎の部分がはっきりと隙間が空いていることがわかります。

○修正後

きっちりと中心にステムシャフトが通っています。


ちなみにステムシャフトの修正方法は、修正機(プレス)を使用したり、状況に応じて治具を製作したりと、曲がり方でさまざまだそう。

 


しかし、トップブリッジやアンダーブラケットが、今回のようなわずかな衝撃でこれほどカンタンに変形してしまうとは考えたこともありませんでした。

とはいえ、フレーム等に大事が至らないようにフロント周りが先に変形し衝撃を吸収していると思うと、あらためて「オートバイはよく出来てるなぁ……」なんて感心してしまいました。たしかにフロント周りの脱着と修正で済めばお財布にも優しいですからね。

[KZ1000]純正流儀でウインカーの後方移設を考える。その1


昨年リアウインカーを後方に移設し、サイドバッグが装着しやすくなったことで積載の幅がグッと広がった僕のSR500。そもそもはパニアケースの装着も考慮し、純正でテールライト・ブラケットにウインカーステーが付く“ドイツ仕様”の存在を知ったことがきっかけでしたが、それ以来、旧車、現行問わず、あらゆるモデルのリアウインカーの位置をチェックするようになってしまいました。

■SR500のウインカー移設の模様はコチラへ


最近ではW800が2018年モデルからリアウインカーの位置が後方に移設されましたね。この純正部品は旧W800はもちろん、W650ユーザーさんでサイドバッグ等を付けるヒトにはほんとオススメです。

というわけで、いよいよ情報と部品が揃ったためKZ1000のリアウインカーも後方移設することにしました。もちろん今回もSR同様、徹底的に“純正流儀”で参ります。

KZ1000純正のリアウインカーの位置はリアサスペンションのすぐ後ろ、ちょうどグラブレールが立ち上がる辺りで、ウインカーステーはフレームと固定。取り付け位置や取り付け方法は’72-3年の初期Z1から基本的には変わらない……と思っていたのですが、Z系の歴史を紐解くと、やはりSRのように欧州輸出モデル(※全てではない!?)にはリアウインカーの位置が後方に移設されたモデルが存在していたのでした。というわけで、その視点でちょっと歴史をおさらいしましょう。


1972-73年の初代Z1。リアウインカーの位置は北米仕様の僕の’77KZ1000と同じ。僕の調べでは’72〜’74年までは仕向地を問わずこの位置。※もし違っていたらご教授を!

以前取材したLewis Leathers東京のショップマネージャーが乗る1975年のZ1Bは、貴重な欧州仕様のオリジナル!

こちらはいわゆる900Z1シリーズの最終、’75年のZ1Bの欧州仕様。欧州仕様の最大の特徴は被りの深いリアフェンダーですが、よ〜くリアウインカーの位置をご覧ください。グラブレールからステーが伸び初期Z1よりも“後方”に付いています。当時のカワサキ車で言えばW3もこの仕様ですが、Zシリーズでウインカー位置が後方に移設されたのはどうやらこの’75年モデルから。ところが、被りが深いリアフェンダーが付く欧州モデルでもリアウインカーの位置は北米仕様(初期Z1)と同じモデルもあるため、ひと言で「欧州仕様はリアウインカーが後方に付く」……とは言えないワケであります。やはりSR同様、BMWを筆頭にパニアケースの装着が当たり前の装備だったドイツを中心とした仕様だったのでしょうか!?

1977 Z1000のドイツのカタログ。「NEU」=ドイツ語で「新着」。リアウインカーは’75 Z1Bと同様にグラブレールから伸びるステーで後方移設されています。

同じく1977のZ1000のカタログ写真ですが、深いリアフェンダーと「Z1000」(※1)のサイドカバーエンブレムが付いていることから欧州向けと思われますが、リアウインカーの位置は初期Z1と同じで後方移設されていません。

そうした意味では、上の2枚は興味深い写真。上は「NEU」(=ドイツ語で「新着」)と書かれているとおり、1977年のドイツ向けのカタログ。下も被りが深いリアフェンダーが付いていることから欧州向けですが、上のZ1000のリアウインカーはグラブレールにステーが付き後方移設されていますが、下のZ1000のリアウインカーの位置は初期Z1と同じで後方移設されていません。


こちらも同じく1977年のカタログ写真ですが、リアフェンダーは被りが浅くサイドカバー・エンブレムは「KZ1000」。つまり北米を中心とした仕様。そもそもZ1の名称は「最高、最終のモノ」という思いが込められ頭文字に「Z」が使用された……のは有名なハナシですが、当時の開発ストーリーによると、なんでも’72年以前にすでにA、B、C、D、F、G、H、J、K等、雰囲気や語呂が良いアルファベットは全て使用済みで「Z」と決まったものの、このネーミング方法では限界が見えていたということで、その後「4ストローク・ストリート車」=KZ、「2ストローク・ストリート車」=KH、「オフロード車」=KEとし、その後ろに排気量を組み合わせるネーミング方法を採用することになったそうです。

ところが!? その矢先「KZ」「KONZENTRATIONSLAGER(強制収容所)」の略称として新聞や雑誌等で広く用いられている……という理由で西ドイツから物言いがついた……というのです。

こちらは1977年Z1000のドイツ向けカタログ。サイドカバー・エンブレムは「Z1000」。リアフェンダーは被りが深く、リアウインカーは後方移設タイプ。

1978年Z1000のカタログ写真。細部の言語から判断するとこちらはデンマークのディーラーのモノ。リアウインカーはこちらも後方移設タイプ。

Zシリーズで「KZ」のネーミングが使われたのは’76年からですが、上記の理由からサイドカバーにKZエンブレムが付くのは北米仕様のみで、欧州向け(日本展開の750/650/400等も含め、北米仕様以外すべて)は「Z」で統一。そうした理由ならば全世界で使用しなければ……と思ってしまいますが、なんでも当時、西ドイツの物言いに対しアメリカ側は「そんなイメージはない」と突っぱねたと言います……戦勝国と敗戦国の差でしょうか!? なんとも戦争が尾を引いているとも感じてしまう逸話であります。(※1)

こちらは1978年のZ1000欧州仕様のカタログからのひとコマ。ライダーの雰囲気もジェントルで“GT”してます。リアウインカーは後方移設タイプ。

……話を戻すと、懸案の“純正流儀のウインカー後方移設”問題は、同じ年式、つまり’77〜’78 Z1000欧州仕様のウインカーステー付きグラブレール(↑)を手に入れれば解決! なのですが、これがe bayを探しまくっても一つも出てこないんです!! 値段が高くて手が出ない……ではなく、ここ1年くらい世界中のネットオークションには皆無!! さて、困った。

気を取り直して系譜に戻りましょう。

1979〜’80 KZ1000 Mk II(北米仕様)

1979〜’80 Z1000 Mk II(欧州仕様)

さて、お次は1979〜’80年の2年間のみにも関わらず、現在も絶大な人気を誇るKZ(Z)1000MkII。サイドカバー・エンブレムからも分かるとおり、上が北米仕様で下が欧州仕様。モデルチェンジに伴いリアフェンダーもスチールから樹脂に変わりましたが、北米仕様は「被りが浅く」欧州仕様は「被りが深い」ことはこれまでと同様。そして!! 注目の(僕だけ!?)リアウインカーの位置ですが、北米仕様はしぶとく初期Z1に倣ったリアサスペンションのすぐ後ろに付いていますが、欧州仕様はテールランプのすぐ下に付いているではないですか!! これだけスペースに余裕があれば、それこそあらゆるパニアケースの装着も容易ですね。

1978 Z1R(欧州仕様)のカタログ写真。フロント18インチが採用されたのはこの年だけですよね。不評で翌年から19インチに戻ったと言いますが、乗ってみたいものです。

じつはコレ、よくよく調べるとひと足先に’78年のZ1R(欧州仕様)から採用されております。

 

ドイツのカタログと思われるこの写真は、カムカバーの形状からも[左]が’78 Z1Rで[右]が’79 MkII。schon immer ihrer Zeit voraus=常に時代を先取りする……という意味。

そしてそして、またしても興味深い(僕だけ!?)カタログ写真がこちら。言語からドイツでのカタログであることは間違いないのですが、左の’78 Z1Rはリアフェンダーの被りが深くリアウインカーはテールランプのすぐ下に付いているにも関わらず、右の’79MkIIは被りの深いリアフェンダーは共通ですが、なんとリアウインカーの位置は初期Z1や北米仕様と同じ位置!?

つまり……ドイツを中心にユーザーやディーラーからの要望を受け、グラブレールにウインカー後方移設のためのステーを付けた’75年のZ1B以降、欧州向けのZシリーズにおいては「ウインカーの位置を選べた」もしくは「オプションで変更できた」と考えるのが妥当ではないか!? と結論づけるワケであります(論文調?)。カワサキさん、教えてください!

 


そして!! こうした事実を研究しながらネットの中を探しまくった結果、なんと欧州仕様のMkII用と思しきウインカーステー付きのテールライト・ブラケットをゲットできたのであります!! 要するに、構造はドイツ仕様のSR500と同じですね。果たして僕のKZ1000に付くのでしょうか!?

■SR500のウインカー移設の模様はコチラへ

その2に続く。

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