クラッチワイヤーエコメンテ


先日、SR500のクラッチスプリングを変更したことで、今までSRよりも軽くて“重たさ”なんて感じていなかったKZのクラッチが気になり、そういえば「ずいぶんご無沙汰!?」と、ワイヤー注油メンテをしました。メンテといってもエンジンオイルをワイヤーに通すだけ。これまでワイヤーインジェクターなんてモノは使ったことがありませんが、これでほんとに十分。

オイルは毎度のエンジンオイル交換後、オイル缶を逆さにしておいて缶の壁面に残るオイルを別の容器に取っておいただけのエコメンテです。基本的にエンジンオイルはSRもKZもW系もカブも編集部のバイクはすべて10w-40。これが20w-50とかだったらワイヤー潤滑用には使用しませんが、10w-40であれば問題ないと20年以上使ってて思います。

以前、10w-40でも粘度が気になる、ワイヤー用ならミシン油がサラサラでいちばん……なんてこだわり派の方もいるなんて聞いたことがあります。ミシンを使っていたらぜひ試してみたいのですが、残油エコもテーマのひとつなのでまだ試せていません。


エンジンオイル交換後にオイル缶を逆さにしておくと、缶1本(1L)でもこうしたボトルに詰め直すとけっこうな量が取れるんですよね。ワイヤー注油以外にもちょっとしたメンテで使う分にはずっと困りません。もちろんスロットルワイヤーも同様です。オイルを通すのに少し根気は必要ですが、これで長年快適なワイヤーの状態を保っています。

[SR500F.I.]クラッチレバーの“遊び”、お好みは?? その3

[上]がSRでずっと使っているストレートタイプのクラッチレバー。[下]がいつから採用されているのか調べていませんが、僕の2010年式も含めた現行のSR純正クラッチレバー。いわゆるパワーレバーと呼ばれる、’80年代以降はリプレイスレバーの主流でもあるドッグレッグ・タイプですね。今やほとんどのメーカーで新車から採用されているドッグレッグ・タイプのレバーですが、僕はストレートタイプの方が好み。もちろん見た目の話ではなく。

■「クラッチレバーの“遊び”、お好みは?? その1」はこちら

■「クラッチレバーの“遊び”、お好みは?? その2」はこちら


ここでようやくブログタイトルの本題。みなさんはクラッチレバーの遊びをどのくらいに調整してますか?

僕のSRは(KZでも)、写真の状態でクラッチが完全に切れているくらいにしています。写真じゃホント伝わりづらいのですが……メーカーの新車(広報車)の調整状態が一般的だとすれば、それよりも少し遊びが少なめの状態。構造上、必要な遊びを確保した上で、写真のように人差し指と中指の第二関節が軽く曲がる程度、この状態でクラッチが切れるくらいに調整しています。一般的な感覚からすると、クラッチが繋がるのが“少し遠く”感じるあたり。できるだけ“深く握らず”にクラッチが切れるくらいが好みです。


指先だけで操作するためクラッチは軽いに越したことありません。ですが従来のクラッチスプリングに不満があったかといえば、そうではありません。

そもそもよく話題になる「クラッチが重たい/軽い」は、おそらく「軽い方が発進時に半クラ状態を維持しやすい=じわ〜っとレバーを放しやすい」という理由が大半だと思いますが、スムーズな発進で意識しなければいけないのは、クラッチというよりスロットル操作。


じわ〜っと恐る恐るクラッチレバーを放す(=半クラ状態が長い)ヒトがやりがちなのが、スロットルを開け回転を上げてからクラッチレバーを放していく操作。いわゆる教習所で習う坂道発進のやり方。エンストしたくない気持ちはわかりますが、スロットルを開けていればいるほど、いつクラッチが繋がるか不安で余計にジワ〜っとレバーを放す操作になりがち。しかもスロットルにもクラッチにもどっちにも意識を向けていないといけなくて意外と大変。それよりもよっぽど安心して発進できる操作手順は、後輪に駆動力がかかり、車体がスルスルッと押し出され始めるトコロ(=クラッチが繋がる場所)までスパッとクラッチレバーを放し、その後はスロットル操作だけで丁寧に発進する操作。

この操作手順に慣れてしまうと、半クラを多用することもなく、無駄にクラッチ板を消耗させることもなくなり、なおかつ丁寧なスロットル操作……意識的にはミリ単位で開け閉めするスロットル操作を覚え、スムーズな発進もスムーズな加速も微細なスロットルワーク次第!! という楽しいオートバイライフが始まる特典付き。つまりクラッチが重い/軽いはさほどストレスにならないのです(もちろん限度はありますよ)。


そんな時、僕にとってはクラッチレバーの遊びが少なめ=やや遠くでクラッチが繋がる方が操作しやすいんです。何が言いたいかというと、クラッチレバーの“遊び”ひとつとっても、正しい操作手順を知り、自分の好みが見つかるとよりバイクライフが楽しくなるというハナシ。ちなみにクラッチ板は約6万キロは使用していますが、まだ使用限界を迎えていなかった(というか、見た目にはほとんど磨耗していない)ので、新品も準備していましたが、ソッとそのまま戻しました。

ドッグレッグよりストレートレバーが好み……というのは、シフトチェンジ時のクラッチレバー操作においての話なんですが、長くなるのでまた次回。


このレバーは2年くらい使ったでしょうか? 軸の部分が長穴に変形していました。


とはいえ、せっかくクラッチを整備するのだからと今回400FI用のスプリングに交換しましたが、やはり軽いに越したことはありませんね!

[SR500F.I.]クラッチレバーの“遊び”、お好みは?? その2

写真ではプッシュレバー装着部分の“オイルシール上”に付くワッシャーが付いておりません……ハイ、装着時に忘れました。ご容赦を。

SRのクラッチ調整が手元(レバー部分)だけじゃないことは、もはやSR乗りならば周知のことですね……なんてエラそうに書いてますが、乗り出してから3年くらいまではじつは僕も知りませんでした。クラッチワイヤーをレバー側から追っていくと、クランクケース上部のシリンダー後方に辿りつきます。指で押さえているプッシュレバーと呼ばれるパーツのアーム部分が、クラッチレバーを握る=クラッチワイヤーを引くことで反時計側に引っぱられ、クラッチが切れる(=クラッチ板が離れる)わけですが、今回クラッチ周りをバラしたついでにその仕組みを写真に撮ってみました。

■クラッチレバーの“遊び”、お好みは?? その1はこちら


一番上の全体図の写真は、先ほどのプッシュレバーのアームの下の部分。つまりSRを真正面から見た時のクランクケース内部。

[上2枚の写真]がクラッチが繋がっている状態で、[3枚目の写真]がクラッチを切った時の状態になります。つまり3枚目の、プッシュレバーが45°ほど反時計方向に回転し、その分だけプッシュロッドを押している状態が、クラッチレバーを握りクラッチを切った時。順を追って説明すると……

1:クラッチレバーを握りワイヤーを引く

2:クラッチワイヤーにプッシュレバーのアームが引っ張られ、プッシュレバーが反時計側に回転する

3:回転したプッシュレバーが、プッシュロッド2(長い方のロッド)を押す

4:プッシュロッド2がプッシュロッド1(1円玉ほどのアタマが付く短いロッド)を押す

5:プッシュロッド1がプレッシャープレートを押し(=クラッチスプリングを縮めて)、クラッチが切れる(=クラッチ板が離れる)

というのが、一連の仕組み。

FI用のクラッチスプリングに変えると“クラッチが軽く”なる……その理由は、クラッチを切ることは、何枚ものクラッチ板を押さえ続けていた“バネを縮める”ことだから。


ここであらためてプッシュレバーの写真(モノクロ)。

マニュアルによれば、写真のように指でレバーを押し、クラッチの遊びをゼロにした状態で、赤線のようにプッシュレバーのアーム先端の中央とクランクケースに付く凸(ポッチ)が一直線上になる位置が正常な状態。僕も過去に経験ありですが、よくあるのはアーム先端中央が“凸部分より前方”に来てしまっている状態。その原因は、プッシュレバーやプッシュロッドの当たり面の磨耗とプッシュレバー位置の調整不足。そうした状態になると、いわゆる「クラッチが重たく」なり始め、クラッチの切れも徐々に芳しくなくなってきます。テコの原理でもあるので、ドラムブレーキのアームの角度と同じ話でもありますね。


プッシュレバーとプッシュロッドはこんな状態で、クラッチを切る度に、レバーがロッドを押す→戻るを繰り返しています。写真は今回交換したプッシュレバーですが、このように磨耗していきます。もちろんプッシュロッド側も。


プッシュレバーやプッシュロッドの当たり面が摩耗してくると、先ほどの正常な位置にならなくなってくるため、SRではプッシュレバーの“高さ”を変え、プッシュロッドとの当たり面を上下にズラす事で、何度か調整が効くようになっています。そのプッシュレバーの高さを調整するのが、偏心カムがついたアジャストボルト。ドライブスプロケット部分のカバーを外すと、プッシュレバーが入っている場所にプラスドライバーで調整するボルトが見えますが、コレが偏心カムが付くアジャストボルト。17mmのロックナットを緩め、時計回り/反時計回りに回すことで、偏心カムがプッシュレバーの高さを調整する仕組みとなっています。そのためSRでのクラッチの遊び調整(久しぶりの場合は特に)は、まずレバー部分ではなく、プッシュレバー側を確認してから……というのが正しい手順というわけです。

プッシュレバーと当たる側のプッシュロッド2の先端の磨耗具合。(奥が新品)

プッシュロッド1と当たる側のプッシュロッド2の先端の磨耗具合。(奥が新品)

同じくプッシュロッド2と当たるプッシュロッド1の先端の磨耗具合。(奥が新品)

偏心カムが付くプッシュレバー位置のアジャストボルト。もちろん奥が新品。

現在の走行距離は約11万キロちょっと。おそらく4万5000キロ時に500cc化した際に、クラッチ周りの部品も新品に交換されているはず(不覚にも未確認)なので、先日外した部品は約6万キロほど走行した後。ぞれぞれがそれなりに摩耗していましたが、アジャストスクリューの偏心カムが一番摩耗していました。でもココ、こんなに摩耗しますかね? 仕組みを知らない時代に、僕がグリグリと回し過ぎたんでしょうか?

次回へ続く。

 

 

↑PageTop