[SR500F.I.]いっそのことハンドルから手を離してしまえばいい!? セルフステアの重要性。


リアタイヤを支点に車体が傾き、その車体の傾きに応じてステアリング/ハンドルが切れる(舵角が付く)、オートバイの仕組み。“セルフステア”とは、ライダーの操作とは関係なく、この車体の傾きに応じて自然とステアリングが切れていく(舵角が付く)こと。よく「ハンドルに力を入れない」と言いますが、それは言い換えれば「セルフステアを妨げない」ということ。

 


上の写真の拡大版。わずかですがフロントタイヤがイン側に切れているのが分かるでしょうか? リアタイヤが写真に対して真正面であるのに対し、フロントタイヤはややマフラー側の側面が見えています。

「ハンドルに余計なチカラを加えてしまっているとセルフステアを妨げてしまう」……というのは、こうした車体の傾きに応じたステアリングの自然な反応をライダー自身が邪魔してしまうこと。つまり、場合によっては自分でオートバイを“傾きにくく”してしまうこともあるということ。ならばいっそのことハンドルから手を離してしまえばいいハナシですが、ブレーキングにクラッチ操作にスロットルのON/OFF……手を離すワケにはいきません。


そういえば、数年前にハッとさせられる記事を読みました。1995年1月号のRIDERS CLUB。そう、ストバイ編集長YASことヤスダがまだライダースクラブに在籍している時代の号です「バイクのハンドリングを激変させたスーパーライディング」と題し、ケニー・ロバーツのライディングを根本さんが解析した記事で、あらためてオートバイの基本である“リアステア”の重要性について説いた非常に勉強になる内容なんですが、その中で面白いハナシがあったので抜粋して紹介します。


ケニー・ロバーツが引退後に自身のチームを率いて鈴鹿8耐にやってきたときのこと——「鈴鹿のピット上で、愛弟子W・レイニーがYZF750でプラクティスしているときに彼がこうつぶやいていた——またハンドルでバイクを寝かしている、だからS字の切り返しターンで前輪が浮いて暴れるんだ。ハンドルバーがフロント・フォークについてなきゃこんなことにならないんだろうに…。タイムを出そうと焦って両腕に力が入れば入るほど、前輪に余計な舵角を与えるきっかけをつくってしまう。速く走ろうとすればそれだけ無駄な力を加えずにスムーズにライディングすることが大切なのに…」(RIDERS CLUB/1995.1より)

この場合は、むしろ車体の傾きに対するステアリングの反応(セルフステア)がW・レイニーにとっては“遅く”感じる場面があり、自らハンドルを操作してしまっていたようですが、この記事であらためて学んだのは、ついつい恐怖からハンドルを押さえつけるように力を入れてしまう僕は、逆にオートバイ自体を寝にくく(傾けにくく)してしまっている!? ということでした。

余談ですが、「オートバイがそう作られている以上、後輪+車体を操るライディング以外に、バランス良くスーパースポーツを乗りこなすテクニックな存在しない」と締めくくられるこのライダースクラブの記事は、その後のストバイでの連載[RSC-リアステア・クラブ]を始めるきっかけのひとつでもありました。だってGPレーサーでもSR乗りでもやらなきゃいけないことは同じだったんですから。


RSC的仕組み&ライディングの話はまた今度……というわけで本題です。セルフステアを妨げない……上で重要であり前提なのが、自分のオートバイはきちんとニュートラルにセルフステアしているのか!? ということ。つまりステアリングの締め付け具合です。当然締め付け過ぎると、ステアリングの反応は遅く(重たく)なるし、反対に締め付けが甘いと段差等を乗り越えたときに「コンッ」とステアリング辺りに嫌な衝撃を感じてしまいます。

初めてSRのステム・ベアリングのグリスアップをしたのは、おそらく納車から4〜5年経った頃でしょうか。マニュアルでは少なくとも2年毎の点検整備を推奨しているのでずいぶん放ったらかしでした。


というのも、フロントタイヤ&フェンダーとフロントフォークの脱着作業は始めてしまえばそれほど大変じゃありませんが、ヘッドライト&メーター関連を外すのが僕にとってはとにかく億劫で億劫で…。なんといっても大変なのは、FIになってからさらに増えたヘッドライト内に収められた配線関連。


で、肝心のステアリングの締め付け具合ですが、じつはこれまで鍵スパナを使用し、これぐらいかなぁ……と自分で締め付け具合を調整していました。もちろんステアリングの反応が遅く(重たく)なるのはゼッタイに嫌なので、できるだけ締め付け過ぎないように注意していたのですが、そうするとベアリングのグリスが切れてきた頃でしょうか? やはり1〜2年ほど経つと段差で「コンッ」と気になる衝撃を感じるようになり、ムムム……と悩むこと5〜6年。ついに約6000円の特殊工具を購入することを決意!!

 

ついに専用工具を購入! 6000円に悩んでいたのがバカバカしくなるほど作業もスムーズでバッチリでした。当たり前ですね。

マニュアルによれば、ステアリングを組み付ける際、2つ重なるロワーリング&アッパー・ナット(これまで鍵スパナで締めていたナット)の下側/ロワーリングナットを、まず38Nmトルクで締め付け、一度完全に緩め、再度18Nmトルクで締め付けるとあります。この作業にはトルクレンチを使うための約6000円ほどの専用特殊工具が必要なのですが、この6000円をケチったのか面倒くさがったのか、これまでなんとなく鍵スパナで作業してましたが、やはり全てがスムーズ!


約2年ぶりにチェックしたステム・ベアリングはグリスもまだある程度残っており、ベアリングレースに打痕もなかったため、今回は洗浄&グリスアップで再度組み付けました。

 

これまでセルステアの反応が遅く(重たく)ならないようにと、締め付け具合に神経を使い気にしていましたが、やはりマニュアル通りが一番ですね。遅く(重たく)なることもなく、段差での衝撃もなく、すこぶる気持ちよくなりました。

 


しかし、早くどこかで[RSC-リアステア・クラブ]を復活させたいものです。

[SR500F.I.]インジェクションSRのフューエルポンプ交換。


“フューエルポンプ”……多くのオートバイ乗りのヒトにとって聞き慣れない部品だと思います。ピストンの上下運動による“負圧”で混合気が吸い込まれるキャブレターと違い、FIモデルは負圧で吸い込まれるのは“空気”だけで、燃料はその都度コンピューター制御により“要求された量”だけ“噴射”される仕組み。その“噴射”に欠かせない部品のひとつが“フューエルポンプ”です。今回ワケあってSRのフューエルポンプを交換したので、あまり見ることのない細部をご紹介します。


ことの発端は、11月下旬に千葉で行われた「メグロミーティング」へ向かう途中に、突然SRが不動になったこと。信号待ちしてたら突然ストンッとエンスト。その後、何回キックしてもエンジンはかかりません。疑うべき箇所は、バッテリー、プラグ、プラグコード、イグニッションコイル辺り!? でしょうか。バッテリーは半年前に交換したばかりだしインジケーターランプもしっかり点灯している。プラグレンチを持っていなかったので、プラグから火が飛んでいるか目視することはできませんでしたが、プラグもバッテリー同様、半年ほど前に変えたばかり。プラグコードとイグニッションコイルは3年ほど前に交換済み。どれも電気部品なので100%問題ないとは言い切れませんが、10年間のあいだにこれらの部品が突然ダメになった経験はないため、どれも可能性は低いでしょう。

おかしいなぁ……と思いながら、一度キーをOFFにし、再びON。すると、キーONでフューエルポンプから聞こえる、正常に作動していることを表す「ピー(ジー)」という電子音が聞こえません。こうなるといくらキックをしても肝心の燃料が噴射されないため、エンジンは一切かかりません。以前、フューエルポンプ系統の配線が短絡した時も同様に電子音が鳴らなくなったため、配線の短絡も疑いましたが、以前の短絡以来、徹底的に配線もチェックしたため、把握しているかぎりではありますが怪しい箇所はない。ヒューズも全て無事……となると、フューエルポンプの故障? いやそもそもフューエルポンプって故障するの!? なんて、アタマを巡らせながらレッカーとともに編集部へ帰ってきたのでした。


フューエルポンプを疑ったもうひとつの理由はレッカーに来てくれた運転手さんとの会話。二輪ではまだインジェクションはそこまで一般的じゃありませんが、街を走っている四輪は30年以上前からほとんどがFI車です。そこで年間、何万キロも走る運転のプロ、レッカー屋さんにフューエルポンプの故障について聞いてみたところ、「フューエルポンプは消耗部品ですよ。一概には言えないけど、10万キロを超えるクルマでフューエルポンプが故障したことは何回もありますよ」と。当然、ひとつの事例に過ぎませんので、“参考”としての情報でしかありませんが、僕のSRは2020年で丸10年。走行距離も10万キロを超えた辺りなので、「もしや…」と疑ったというワケです。


左サイドカバーの内側に収まっているフューエルポンプは、外側の黒い“フューエルポンプ・ケース”と内側の白い“フューエルポンプ”に分かれます。

[左]10年10万キロ使用のフューエルポンプ [右]新品のフューエルポンプ

ちなみに上の写真が、古いフューエルポンプ(左)と新品のフューエルポンプ(右)。フィルターはそれなりに汚れていますが、ケース内部も含め割ときれいでした。ちなみにフューエルポンプ・ケースもフューエルタンクと同様、停車時でも常に燃料が入っているので、ガソリンが腐ってしまうほど放置していると、フューエルポンプ内部も錆をはじめ相当汚れてしまいます。キャブ車ではキャブレターのOHが必要になるのと同じように、FI車ではフューエルポンンプの交換が必要になってしまうので、たまにエンジンをかけることはキャブ/FIに関わらずやはり重要ですね。


FIモデルのガソリン経路を確認しましょう。ポイントはFI車は「送り側」「戻り側」の2経路あるということ。


「送り側」は、まず燃料はガソリンタンク→ガソリンコックを経て、ケース外側からフューエルポンプ・ケースに入ります。


フューエルポンプ・ケースに入った燃料は、フューエルポンプのフィルターを通ってフューエルポンプ内の経路に入ります。※写真左のケース上部に見える経路は、後ほど説明する「戻り側」の経路のひとつ。


フィルターを通った燃料は内部のモーターの力でフューエルポンプの下に付く出口からフューエル・インジェクターへ圧送され、その後コンピューター制御によりその都度要求された量だけエンジン(インテークマニホールド)に“噴射”されます。

上の図で、インジェクターの下に“プレッシャー・レギュレーター”とありますが、この部品はその名のとおりインジェクターに供給される燃圧を一定に維持する役割。四輪の世界ではこのプレッシャー・レギュレーターの燃圧を高くして、インジェクターから噴射される燃料の“霧化”を促進させるパーツもあるようですね。


次に「戻り側」ですが、まずは上の写真をご覧ください。どちらもSRの純正タンクの内部ですが、手前がFIモデルで奥がキャブレターモデル。FIモデルから内部に2本の管が追加されていますが、これが燃料が「戻る」2つの経路の出口です。


ひとつ目の経路は、フュエルポンプ・ケースの上部からそのまま燃料タンクへ戻ります。もうひとつはプレッシャー・レギュレーターから不要だった燃料がフューエルタンクに戻ります(フューエルポンプからは常に一定の燃料が圧送されますが、インジェクターから噴射される燃料はコンピューター制御によりその都度違うため)。タンク内部の2本の管は、この2種類の「戻り側」の経路。

ちなみにFI車で長時間走っていると、フューエルタンクが少し“熱く”なってくると思いますが、これはプレッシャー・レギュレーター側から“圧力とともに”燃料が戻ってきているため。そのため、通常フューエルタンクのエア抜きはタンクキャップからだけですが、FI車からはタンク前方に圧抜きの弁が追加されましたね。

 


さぁ、これで修理完了! と思いきや、まさかの症状変わらず!!??

その後、落ち着き確認しやすい箇所からチェックすると、原因はなんのこっちゃない、バッテリーの死亡でした。半年前に変えたばかりなのに〜!! 悔しい!! ぼちぼちフューエルポンプも交換時期だったということでヨシとしましょうか。

[SR500F.I.]サイドスタンド・スイッチのキャンセル。

サイドスタンドスイッチ&配線を取り外した状態。ブログを読み進めれば分かりますが、先端のカプラーは切断しています。

SR乗りの皆さん、サイドスタンド・スイッチをご存知でしょうか? いわゆるサイドスタンドを出したまま、ギアを入れると強制的にエンジンがストップする、あのスイッチです。’90年代前半ぐらいから付いている(おそらく!?)この安全装置。幸い僕はサイドスタンドのしまい忘れがなかったおかげで、じつは納車から3年くらい経つまでスイッチの存在自体知りませんでした。

サイドスタンドが下りていない状態。スイッチのノブは飛び出したままです。

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サイドスタンドが下りている状態。スタンドの付け根がスイッチのノブを押すことで通電が遮断される仕組み。

スイッチ自体はサイドスタンド付け根の前方にあり、スタンドを下ろすと付け根がスイッチのノブを押し通電が遮断される仕組み……なんですが、ここ半年くらい「ちゃんとサイドスタンドを跳ね上げている」にも関わらず、ギアを入れるとエンジンがストップする……という状態が頻発するようになってきてました。


犯人はこーゆーこと。スイッチのノブ部分の潤滑不足かなんなのか!? つまりサイドスタンドを跳ね上げてもスイッチのノブが“戻らない”ことが原因。ちょっとしたことですが、エンジンを始動してさぁ発進! とギアを入れた瞬間にエンジンが停まるのはかなりのストレス。おまけにその都度センタースタンドを立ててスイッチのノブを手で引っ張り出さないといけないワケです。半年ほどたま〜に起こるとこの作業を繰り返していましたがもう限界!! というわけで、新品に交換してもいずれ同じことが起こるならと、スイッチ自体をキャンセルすることにしました。


スイッチの配線を辿ると、エアクリーナー・ボックス手前の配線が束ねられている場所で2本の配線がカプラーで繋がってました。まずはカプラーを外してスイッチを分解して構造の確認です。


スイッチのノブの可動部分は若干サビが出ていますね。指で押しても戻ったり戻らなかったり……雨天時の走行も考えると水の侵入も十分あり得る部分。錆が原因で動きが渋くなったのでしょうか? とはいえ、10年&約10万キロ走って初めてのトラブル……そう思うと消耗部品としては十分機能した部類でしょう。

スイッチのノブを押していない状態=サイドスタンドを下ろしていない時(走行時)=通電ON。

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スイッチのノブを押している状態=サイドスタンドを下ろしている時(停車時)=通電OFF。

構造はご覧のとおり。スイッチを押していない状態=サイドスタンドを跳ね上げている時=走行時は通電している状態。逆に、スイッチを押している状態=サイドスタンドを下ろしている時=停車時は通電が遮断される仕組みになっています。


マニュアルによると……エンジンが始動していてギアが噛み合っている状態(ニュートラル以外)でサイドスタンドを下ろすとエンジンが停止する「サイドスタンド・スイッチ」は、ニュートラル・スイッチサイドスタンド・スイッチ両方が“OFF”になると、イグニッションコイルから電流が流れず点火がカットされる仕組み……だそう。

サイドスタンド・スイッチの方は、文字通り“フタを開けてみれば”単純な構造&仕組み。つまりスイッチをキャンセルするには、つねにサイドスタンドを跳ね上げている状態=スイッチを押していない状態=通電状態=スイッチを介さず2本の配線を繋いでおけばいいわけです。


スイッチの可動部分はかなり錆てました。指で押しても動きが渋い。


というわけで、カプラーとある程度の長さの配線を残し切断。

そして結線。結線後、カプラーとともにコンパクトに収めたかったため今回はハンダで配線を繋ぎました。


配線を折り返しタイラップでまとめたらゴムカバーの中に収納して作業は終了!

相変わらず電気系には苦手意識があり、配線図なんて見たってチンプンカンプン……ですが、落ち着いて分解してみれば誰でも理解できる仕組みでホッとしました。多くのヒトも経験している超簡単な作業でしたが、また一つ知らなかったことを理解でき充実の達成感。

もうあのストレスとは永遠におさらばです!!

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